最近の新入社員はかなりお疲れのようで、それも「就活疲れ」だという。産業能率大学の「2008年度新入社員の『売り手市場度』調査」によると、売り手市場といわれる昨今の就職戦線だが、08年度の新入社員は氷河期といわれた1998年のときよりも「かなり大変だった」という。その背景に、「就職活動の期間が長いこと」があげられている。学生の「青田買い」を禁止していた、いわゆる就職協定がなくなって12年。その「復活」さえ噂されている。
大学生活実質2年は学業に支障きたす
就職協定の復活はあるのか(写真はイメージ)
企業の新卒採用は、日本経済団体連合会が2004年度に制定した「新規学卒者等の採用選考に関する企業の倫理憲章」に基づいて、就活は大学3年生の秋にはじまる「紳士協定」を結んでいる。
しかし、現実には3年生の夏休みから本格化。企業が主催する説明会や企業セミナーがはじまり、最近では職場見学や、実際に仕事に就いて経験してもらうインターンシップ制度も活発になっている。就職情報誌が主催する企業の合同説明会などを含めると5月連休明けごろにはスタートするから、大学3年生になってすぐに開始といってもおかしくない。
法学部3年の女子大生は「1月からが本番」と話すが、「勝負」は4月まで。「4年生の4、5月にはほとんどが決まっていて、夏になって就活している人はちょっとヤバイ」というし、4年生の秋になっても希望する企業に就職が決まらないと休学したり、わざと単位を落としたりして「翌年に賭ける」人もいるそうだ。
倫理憲章では、内定は10月1日以降に出すことになっているので、4年生の4~9月末に出されるのは内々定ということになる。もちろんそれは表向きで、学生は「実質は内定」と認識している。
産能大が08年度の新入社員750人に聞いたところ、就活が「かなり大変だった」と答えた人は22.7%を占めた。これはバブル期の2倍以上で、就職氷河期の24.1%とも僅差だった。「思ったより大変だった」(41.4%)を含めると、64.1%が「大変だった」。その背景には、就活が長期化していることがある。
外資系企業は協定に縛られない
スタート時期が早まり、学業への影響が懸念されるが、一方の企業にも優秀な人材を他社へ横どりされないように繋ぎ止める負担がある。内定(内々定)を出してから、定期的に会社を訪問させたり、製品やグッズなどをおみやげにもたせたり、内定者研修がある企業も。入社前に仕事に必要になる資格の取得を奨励し、その費用を補助する。また、バブル期に行っていた海外研修を復活するなど、囲い込む企業側もかなり熱くなっている。
かつてあった就職協定は1996年に廃止された。学生、企業の双方が少なからず負担に感じているのであれば、おのずと就職協定の「復活」の話があってもよさそう。新卒採用の歴史をひも解くと、ほぼ10年ごとに就職協定が廃止・復活を繰り返してもいる。
J-CASTニュースは就職協定の復活について、アンケートを実施した産能大に聞いた。すると、「復活はむずかしい」と即答された。「一般論としてですが、大学側としては『就活は4年生になってから』とは、なかなか言えません。学生の将来にかかわる問題ですし・・・」と歯切れが悪い。大学関係者のあいだでも「復活」は、いまのところ話題にならないという。
企業側にも「復活」できない理由がある。それは「外国企業の進出」だ。日本経団連が制定した「企業の倫理憲章」に賛同しているのは895社(07年10月現在)。しかし、ここに外国企業は入っていない。
ある大手銀行は、こう説明する。
「ここ数年、外資系の投資銀行などが学生に人気で、優秀な人材がそっちへ流れている。外資系は経団連にも加盟していないので、倫理憲章の縛りもないし、優秀な人材であれば、つねに確保しようとしている。そういう企業を相手に、どうしても後れをとりたくない」
となれば、就職協定など「ありがた迷惑」になるだけだ。