グリーンピース側が宅配鯨肉を持ち出した問題で、青森県警が、鯨肉所有者の乗組員らから話を聞くなど、本格的に窃盗の捜査をしていることが分かった。グリーンピースは、宅配業者には謝罪したものの、乗組員への謝罪は拒否している。
グリーンピース、「捜査には協力します」
横領不起訴方針のニュースをアップした日本テレビのサイト
環境保護団体のグリーンピース・ジャパンは、日本の調査捕鯨船乗組員による鯨肉の横領を告発するとして、西濃運輸青森支店から2008年4月16日、鯨肉が入った段ボール箱を勝手に持ち出した。同社は、青森県警に5月16日に盗みの被害届を出し、県警では、乗組員やその同僚らから話を聞くなど本格的に調べている。
このことは、乗組員を出している共同船舶の常務が6月13日、J-CASTニュースの取材に対して明らかにした。この常務は、グリーンピースの行為に対し、「宅配の途中で荷物を抜き取るなど、非常識極まりない」と批判。乗組員がグリーンピース側を窃盗罪で告発する可能性を改めて示唆した。
一方、グリーンピースの広報担当者は、J-CASTニュースに対し、弁護士を通じて、青森県警に対し、「捜査に協力します」と伝えたことを明らかにした。説明文書も送ったが、県警からはまだ連絡は来ていないという。また、西濃運輸に対しては、同社からの許可を得ずに持ち出し、迷惑をかけたとして、口頭と文書で謝罪した。
しかし、鯨肉持ち出しについては、「窃盗罪が成立することはない」との立場を崩していない。その理由として、横領の証拠として確保しただけで、自分のものにしようとしたわけではないことを挙げている。鯨肉入り段ボール箱は、告発を受理した東京地検に5月21日に証拠として提出済みだ。
さらに、鯨肉所有者の乗組員に対しては、連絡を取っておらず、謝罪する意思もないとしている。その理由について、広報担当者は、「私どもが告発しているのですよ。『すいません』と言うのですか」と答えている。
横領不起訴は確認できず
一方、グリーンピースが業務上横領罪で告発した乗組員らについては、日本テレビや共同通信などが、東京地検が近く不起訴にする方針だと報じた。それによると、共同船舶が鯨肉を買い取って慰労の意味で乗組員に配っているため、嫌疑がないと判断したという。
これに対し、グリーンピースも共同船舶も、検察側の方針はまだ決まっていないとの見方だ。
グリーンピースでは、弁護士を通じて地検に問い合わせたところ、まだ捜査中で不起訴方針という事実はないとの回答だったとしている。オーストラリアのラッド首相が来日して捕鯨問題を話し合うなどのタイミングで誤報が流されたとして、「捕鯨派による非常に意図的な情報操作だと思います。調査捕鯨を続ける狙いがあります」と主張している。
共同船舶では、「関係者を含めて、事情聴取は終わっていないようです」としているものの、横領については否定。「従来からの水産業界の慣習により、会社で決められた範囲内で、乗組員にお土産を渡しています。告発されるようなことではありません」と釈明している。グリーンピースが土産なら冷凍で宅配されると主張していることに対しては、「短期間なら常温でも腐らないので、たまたま鯨肉が塩漬けだっただけ」と反論している。横流し転売の指摘については、「内部調査で全員に事情を聞いており、そういう事実はありません」としている。
水産庁遠洋課では、横領告発後の経緯について、「不起訴とは聞いていないので、びっくりしています。まだ捜査中とあって共同船舶からの報告書提出が遅れており、報告を受けたうえで検証することになります」と話している。