「私は不謹慎なのでしょうか?」
しかし、人としてのモラルを考え、複雑な心境を漏らす投稿者もいた。
動画配信サイト「UstreamTV」で実況中継したあるプログラマー。自らのブログ「Recently」の日記で、こう悩みを打ち明けた。
「これはただの報道ごっこであり、そんなの撮るんじゃない。不謹慎だ。とか思われるだろうし、警官の人にも『人の不幸を撮って楽しいか?』とか言われました」
現場では、映像のネタになると思って撮り始め、視聴者が1000人を超えるとかなり興奮したという。投稿は反響を呼んで、2ちゃんねるにもリンクが張られた。「もしかしたら報道のカメラマンはこういう気持ちになってる人もいるんだろうなぁ~」とも漏らしている。
同様に、UstreamTVで中継した化学関係の仕事の人は、ブログ「ぐんにょりくもりぞら」の日記で、「野次馬根性がなかったとは言い切れません。ustの閲覧者が増えていき数百人を超えた辺りである種の高揚感があったのも認めます。そんな私は不謹慎なのでしょうか?」と揺れる心の内を明かした。中継したのは、「その場での出来事を、あの場の空気を中継したかったからした。ただそれだけでした」という。
一方で、投稿の意義も感じているようだ。前出のプログラマーは、「それでも、野次馬(一般市民)の人たちが2次的被害にあってないとか、警察・救急の方々の仕事ぶり、犯人の逮捕状況(このときは逃走中)などリアルタイムで伝えることができただろうし、事件を知ってから現場に急行したテレビ局の報道の人達よりは多くの情報を伝えられたと思う」と日記につづっている。
「ガ島通信」で知られるブロガーの藤代裕之さんは、日経ネットの6月10日付コラムで、投稿者モラルの問題を取り上げた。そこで、藤代さんは、「誰もが発信できるとなると、『野次馬』と『報道』の違い、そしてマスメディアの正当性も揺らいでくる」として、「これまでマスメディアの人たちが経験した葛藤が誰にも起き得る」と指摘している。
ライブドアでは、世論調査サイトで、事件現場の撮影がモラルに反すると思うかどうかのアンケートをした。その結果、「思う」が66.89%で、「思わない」が33.1%だった。面白半分の撮影には否定的な一方、撮影の社会的意義も認めざるをえないとの声のようだ。