現金200万円近くを受け取っていた財務官僚も分かったタクシー接待問題は、底知れぬ広がりを見せている。聞き取り調査だけで13省庁502人にも及ぶが、悪質な違反を隠している可能性があり、警察の動きも報じられる事態になっている。
「そんなサービスは20年以上前から」
官僚の帰りは「居酒屋タクシー」だった
接待汚染が常態化していたことをうかがわせる個人タクシー運転手の証言が、2008年6月6日付朝日新聞の記事にある。
「そんなサービスは20年以上前から。何で今ごろ問題になるのだろう」
冷蔵庫を車内に備え、冷えたビールを官僚に渡す。タクシー料金が1万~1万5000円で、500円のクオカードが相場だったとも。厳しい競争を強いられる個人タクシーには常態化した営業手法で、業界では「居酒屋タクシー」と呼ばれていた。
特に接待がひどかったのが、財務省だ。新聞各紙や同省実態調査の中間まとめによると、金品を受けたのが383人にも及んでいた。このうち、埼玉県在住の30代主計局係長は、約5年間にもわたって2000~3000円の現金やクオカードを年150回ほどもらっていた。現金だけで187万5000円になるというから驚きだ。1回のタクシー代が2万数千円という「上客」だった。
このほか、ビール券、商品券などの金券をもらったのが18人。総額20万7500円に上る。ある職員は3年間で500円のビール券を年50回ももらっていた。それ以外の364人は、ビールやお茶など物品のみの提供を受けていた。
接待の発覚は、他の省庁にも次々に広がっている。中間まとめだけで、財務省も含め13省庁で計502人、回数にして計1万2400回以上も金品が提供されたことが分かった。多いところでは、国交省36人、金融庁16人、農水省13人などとなっている。環境省では1万5000円分、総務省では500円分の金券受領も発覚した。
現金受領は明らかに道路運送法違反
財務省では、提供を受けた金品はタクシー側に返還させる方針で、違法行為がなかったかについて調べている。現金受領は明らかに道路運送法違反になるとみられ、このほかの行為も、利害関係者以外からも利益供与を制限した国家公務員倫理規程違反の疑いが出ている。
ただ、聞き取り調査では、ウソを言う可能性がある。水増し請求による現金のキックバックがないか警察が動いているとの報道もある。各省庁では、刑事告発を考えないのか。しかし、現金受領例が出た財務省の広報室は、J-CASTニュースの取材に対し、「違反がないか確認している段階で、告発するかどうかは何も決まっていません」と答えるだけだった。