外国企業の上場減少 東証の地盤沈下深刻

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   東京証券取引所が外国企業の上場誘致、維持に苦慮している。2008年5月21日には、英金融大手バークレイズ・ピーエルシーが、東証に上場廃止の申請を提出した。日本で保有されている株式数が減少し、売買高も上場しているロンドン、ニューヨーク証券取引所よりも少ないことや、金融商品取引法の施行で開示義務の負担が増えたことなどが主な理由だ。東証に上場する外国企業は現在25社で、ピークの91年の5分の1の水準に落ち込んだ。東証は事態打開のため、株式とほぼ同じ機能を持つ日本預託証券(JDR)など外国企業誘致策を打ち出したが、地盤沈下を食い止める効果は未知数だ。

金融商品取引法の施行も影響

東証は外国企業の上場誘致に苦慮しているという
東証は外国企業の上場誘致に苦慮しているという
「中国の企業が2、3社上場したら、その一方で2、3社の外国企業が減っていくというのは、頭が痛いし、悲しい」

   東証の斉藤惇社長は5月27日の会見で、中国本土企業が4月に上場したことを念頭に置きながら、バークレイズが上場廃止を申請したことに悔しさをにじませた。バークレイズは、金融商品取引法の施行で開示義務の負担が増えたことを理由に挙げた。開示義務の負担が増えたと感じる外国企業は多く、今後も上場廃止が続く可能性がある。斉藤社長は「投資家保護を優先して規制の壁を上げると市場参加者は減る」と指摘したように、ある程度の撤退は覚悟しているようだ。

   斉藤社長が嘆くように、東証に上場する外国企業は減少している。ピーク時の91年には127社が上場していた。だが、バブル崩壊後、東京市場の株取引は低迷。さらに、日本語による情報開示の事務コストに加え、インターネット取引の普及で、外国企業が東証に上場する意義が薄まり、IBM、ペプシコなどの企業が東証から離れた。

   東証は事態を放置していたわけではない。06年12月、マザーズ市場に外国株専門の「マザーズ・グローバル」を創設。英国の日本企業調査会社「ジャパンインベスト・グループ・ピー・エル・シー」が上場したが、後が続かない。

   そこで、東証が外国企業誘致の切り札として期待するのが、07年11月に解禁されたJDRだ。JDRは、海外企業が発行した株式をもとに信託銀行 などが発行する有価証券で、自国の規制で、直接、東証に株式を上場できない外国企業が活用すれば、投資家は東証で株式と同様に、その外国企業の株式を取引できる枠組みだ。

JDR活用の上場もいまひとつ進まず

   JDR上場1号になりそうなのが、インドの大手財閥タタグループ傘下のタタ自動車。タタ自動車は、インドでのモーターショーで、世界で最も安い10万ルピー(約27万円)の超低価格車「ナノ」を公開し、日本での販売も視野に入れている。東証上場で知名度を高めて資金調達を円滑に行う狙いと見られる。

   ただ、JDRを活用して東証に上場を検討している外国企業名は、他には聞かれない。証券業界としても「タタ自動車のよう知名度があればよいが、新興国の企業だからといって投資家の人気を集めるとは限らない」(大手証券)と厳しく見ており、熱気は今ひとつだ。東証役員は「小手先の対応で外国企業を引き留めるよりも、魅力ある市場を整備しておくことが重要だ」と冷静さを装うが、有効な外国企業の上場誘致策、維持策は見いだしておらず、東証の地盤沈下に歯止めがかかる兆しは見えない。

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