「最も長い刑期を基準に決めるべき」との意見も
懲役刑や服役後の保護観察などについて、再犯者らに甘すぎるということはないのだろうか。
白鴎大学法科大学院長の土本武司教授は、再犯者らに対して、裁判所がもっと厳しくなるべきとの意見だ。「日本では裁判官が慎重で、判決を法定刑期の半分以下で決める場合が多いのが特徴です。しかし、それでは、いつまでも犯罪を起こす人に対して自制効果が出てこないことになります。最も長い刑期を基準に決めるべきで、刑法の運用を是正する必要があります」と提言する。
特に、再犯で刑期を2倍にできる「再犯加重」の制度をもっと活用すべきと説く。「例えば、窃盗の再犯なら、刑期が2倍の20年以下になりますから、20年を基準にすべきです」
2007年度版「犯罪白書」によると、日本では、窃盗の再犯率が約5割もあるのに、初犯者の約9割に執行猶予付きの判決が出ている。これに対しても、土本教授は、異論を唱える。「執行猶予はいい制度ですが、裁判官は盗みぐせなどを見抜く洞察力が必要です。DV、性犯罪など生来的な要素が強いようなら、猶予をつけるべきではありません。裁判官は、初めから決めてかからず、事件ごとに判断すべきです」
一方、早大大学院法務研究科の高橋則夫教授は、「服役後の受け皿ができていない社会が問題だ」と指摘する。
犯罪白書によると、06年は窃盗再犯者の8割以上は無職だったことが分かっている。また、法務省によると、同年における犯罪の再犯率は、有職者が1割未満なのにたいし、無職者が約4割にも上っている。各種調査からも、刑法犯の件数と失業率がリンクすることも分かっている。ところが、前科があっても雇用する「協力雇用主」は、08年4月現在6500社余りで、うち雇用実績があるのは約300社と1割にも満たない。
こうしたことから、高橋教授は、「日本は遅れており、大手企業が刑に服した人を積極的に雇うべきです。犯罪は、『個人の責任』と排除するのではなく、『社会から生まれた』との意識が根づけば、受け入れられるはずです」と話す。
執行猶予期間についても、社会の受け皿整備を提言する。「外国では、週末や夜間だけ拘禁するという『半分拘禁』の制度があります。性犯罪をした人は、昼間は仕事をさせ、夜間は人を襲わないように教育の時間に充てるというやり方も考えられます。日本でも、可能であればこの制度をやった方がいいと思います」