電気通信事業者4団体が、インターネットのヘビーユーザーに対する使用制限のガイドラインを公表した。いわゆるデータ量が増え通信速度が遅くなる「ネット渋滞」を緩和するためだが、ヘビーユーザーは利用者全体の約1%にもかかわらず、バックボーン帯域(配信能力)の約50%を消費しているのだという。
ファイル交換ソフトは数千倍のトラフィックを占有する
P2P利用者による「ネット渋滞」が話題(写真はイメージ)
ヘビーユーザーとは、ファイル交換ソフト「ウィニー」などを代表とする「P2P」(ピア・トゥー・ピア)利用者。日本インターネットプロバイダー協会など電気通信事業者4団体が2008年5月23日に発表した「帯域制御の運用基準に関するガイドライン」によれば、インターネット利用者全体の約1%のユーザがファイル交換ソフトを利用していて、バックボーン帯域の約50%を消費。ファイル交換ソフトユーザー(24時間以内にP2Pトラフィックが1Mbyte以上あったユーザとして測定)の上位10%でトラフィック全体の60%以上を占有しているのだという。
ファイル交換ソフトを使った場合、ユーザーが必要とするデータの約1万倍のデータが自動的にダウンロードされる。ダウンロードされたデータは再びネットに流れるため莫大なトラフィックを占有。さらに、ヘビーユーザーはファイル交換ソフトを高速で24時間中動かしているため、一般の利用者の数千倍のトラフィックを占有することになり、それが「ネット渋滞」を引き起こす元になっているのだ。
こうしたヘビーユーザーに対してはかねてから「別途課金したほうがいいのではないか」「使用の制限をしたほうがいいのではないか」などの議論が起こっていた。ニフティーは06年4月からファイル交換ソフト使用者に対し通信速度制限を告知。「ファイル交換ソフトの速度が低下する場合がある」とホームページ上に記した。IIJは04年2月に「トラフィックが24時間あたり15GBを越えるお客様について、利用の一部制限もしくは停止することがあります」と告知していた。
「制限することもある」と正式にユーザーに伝える
今回のガイドラインでは、突出したヘビーユーザーに対し正式に「制御(制限)を行うこともある」という意思を伝えた形だ。日本インターネットプロバイダー協会の木村孝会長補佐によれば、ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)も毎年1.3~1.4倍と容量を増やしているものの、ファイル交換ソフトで使われる量はそれを上回るほど増加。一般ユーザーも「ユーチューブ」や「ニコニコ動画」など見る機会が増え「渋滞」が心配されているのだという。
「ファイル交換ソフトが悪いといっているのではなく、いつでも自由に使えるのが理想ですが、渋滞を避けるために、トラフィックが集中する午前零時前後のファイル交換ソフト使用を控えてもらえれば」
と話している。