ITを使ったビジネスモデル改革、業務改善が進む
このように、ITを活用して「モノ」の動きをなくしたり、少なくしたりすればCO2を削減できる。セブン-イレブン・ジャパンの共同配送の例では、1974年に1日1店舗あたり70台の配送車を要していたのが、2005年にはこれが8.9台にまでに減った。なにが、どのくらい、どの店舗で売れているかなど、ITによる商品管理を徹底する一方で、商品ごとに共同配送センターを設けて在庫の「省エネ」管理を行い、CO2を削減している。
NRIの椎野孝雄理事は、「いまではめずらしくなくなった共同配送だが、はじめた時は配送ルートや時間の問題など、いろいろあったが業界の協力とITの力があってここまでやってきた」と話す。
Amazonに代表される書籍の「流通革命」もITが大きな役割を果たした。返品率を比べると、ネット書店のほうが町の書店より約4%少ない。ダウンロードサービスも普及もCO2削減に貢献する。音楽配信市場は、05年に69億円とCD市場の2%にも満たないが、CD売り上げは年々減少し、ダウンロード販売が伸びていることは確かだ。NRIは2012年にはダウンロード販売が880億円になると予測。CDという「モノ」がいらなくなって、製造や配送、在庫管理にかかるコストがなくなるからだ。
ITは「勤め方」や「仕事のやり方」も変え、それによるCO2削減効果もある。事務所や店舗をなくすことで在宅勤務(テレワーク)が可能になるし、テレビ会議によって「ヒト」の移動にかかるコストが省ける。ある建設会社の例では、建設現場(作業所)と本社をインターネットで繋ぎ、資材の調達や就労管理などに役立てている。
ユーザーがネットワーク経由で活用するSaaSや仮想化の技術がワークスタイルに変化をもたらすともいわれ、「グリーンIT」はインターネット上でも話題になって取り上げられている。
日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調べでは、重点的なIT投資の分野として、多くの企業が生産・在庫管理システムや営業販売業務をあげている。さらにはITを、防犯上の活用や遠隔医療などの利用を増やしていくことで、地球温暖化防止に貢献したいというわけだ。
6月9日から開催されるアジア最大級のネットワークイベント「Interop Tokyo」でも、今年はグリーンITを主要テーマの1つに掲げており、業界の注目度の高さが伺える。同イベントでは、日立やNTTデータなどの最先端の取り組みを紹介する企画が予定されている。