韓国で偽造された2億円余の収入印紙や切手が、日本で流通している可能性が高まっている。まだ被害は確認されていないが、関西国際空港から持ち込まれたといい、金券ショップでは警戒を強めている。
韓国の造幣公社元職員が関与?
「様子がおかしければ、買い取りしません。まだ被害はありませんが、かなり警戒しています」
大量の偽造印紙・切手が出回っているというニュースに、大阪市の金券ショップ「チケットゾーン」本店の男性店長は、こう明かした。
買い取りに当たっては、本物と見比べて、ルーペや紫外線で色や模様などをチェック。印紙や切手を大量に買い取るときは、身分証を確認するようにしているという。
この偽造事件は、韓国の釜山地方警察庁が2008年5月29日、現地で発表した。新聞各紙によると、容疑者の韓国人らは07年6月、韓国の釜山市内など3か所で、200円の収入印紙100万枚、50円の切手60万枚、計2億3000万円分を偽造した疑い。このうち、200円印紙のすべての枚数、50円切手20万枚、計2億1000万円分が、関西国際空港からすでに日本に持ち込まれたとされている。
リーダー格として、大阪市在住の日本人の男(60)が事件に関わっているとされ、韓国側から通報を受けた大阪府警が捜査している。この男は、府警が08年4月4日、偽造収入印紙を暴力団組員に売ったとして逮捕、起訴したと発表した建築業者ではないかとみられている。このときの収入印紙も、額面が200円で、5000枚が35万円で売られた。印紙はその後、2回の転売を経て、大阪市内の金券ショップに持ち込まれていた。
韓国で偽造の印紙・切手は、釜山の工場で原本となるフィルムを作成。蔚山市内の印刷所で偽造するという大掛かりなグループ組織の犯行だった。シートに細かい穴を開ける作業に、韓国の造幣公社元職員が関与している疑いも出ている。府警摘発の事件では、収入印紙は偽造防止用の微小文字まで再現した精巧な作りだった。
過去には約5500万円詐取のショップも
収入印紙や切手は、精巧な偽造の場合、なかなか見抜けないものなのか。
日本の印紙や切手を印刷している国立印刷局では、「簡単に偽造できるものは作っていません」として、金券ショップなどが注意すれば見抜けると説明する。
「現物を見ていないのでよく分かりませんが、摘発されたということはそれほど精巧なものではなかったのではと思います。たとえ精巧に偽造されていたとしても、色がおかしかったりします」
金券ショップなどでつくる日本チケット商協同組合の伊集院浩二理事長は、組合員が引っかかる可能性については否定的だ。
「偽造鑑定講習会をしており、組合員には被害はないと思います。今は確かに印刷技術が発達していますが、プロが見れば分かります。ルーペ、紫外線のほか、磁気を使ったりして、印刷技術を判定します」
ただ、過去には、組合員ではないものの、偽造印紙事件に巻き込まれた金券ショップもある。東京・上野の「大黒屋」アメ横店では2006年7月4日、今回と同じ額面200円の偽造印紙約30万枚が持ち込まれ、約5500万円をだまし取られている。運転免許証を見せ、選挙関係者であると称していた。
偽造印紙を持ち込んだのは、韓国籍の男2人で、警視庁が07年4月25日に逮捕している。海外から取り寄せたとみられており、今回の事件と手口がよく似ている。この偽造印紙は、印刷の色がやや濃かったものの、紫外線を当てると発光する発覚防止策が施され、裏面ののり部分に繊維模様が印刷されているほど精巧だった。
大黒屋では、今回の事件については、被害の事実は確認していないという。そのうえで、「各店舗には、大量の持ち込みなら気を付けろと伝えてあります。店舗では、本物とよく見比べて買い取っています。今のところ大量の持ち込みがないので、被害はないと判断しています」と話す。
日本チケット商協同組合の伊集院理事長は、「こちらでも今、調査中です。過去に大黒屋さんのような被害例がありますので、組合員には注意喚起しています」と話している。