中国の著名企業を、大震災の「二次災害」が襲っている。日本企業が多額の義援金を寄付していることが中国国内で大きく報道されている一方、「中国企業は寄付額が少ない」との批判が噴出しているのだ。大手ネット企業「アリババ」のCEOが過去のインタビューで「不必要な寄付は1元でいい」と発言したことが、今回の地震をきっかけにネット上に拡散、批判が広がっているのだ。同社では多額の義援金を寄付することを発表、国民の誤解をときたい考えだ。
「中国の大富豪は、チャリティーには関心を示さない」
大手商取引サイト「アリババ」CEOが騒ぎに巻き込まれた
思わぬ災難に見舞われているのは、中国最大の企業間(B2B)電子商取引サイトを運営する「アリババグループ」(浙江省杭州市)の馬雲CEOだ。同社サイトのユーザー数は3000万を超え、240あまりの国・地域で利用されている。日本でのビジネスも近く本格展開される見通しで、2008年5月15日には、ソフトバンクが同社の日本法人に65%出資することが発表されたばかりだ。
問題となったのは、「大秦之心」と名乗る者が2008年5月18日16時57分に書き込んだ「馬雲氏が寄付した1元について」という題名の書き込みだ。馬雲氏が「寄付は1元だけでいい」などと発言した、などと指摘するもので、これがもとで「中国の大富豪は、チャリティーには関心を示さない」などと批判する声が相次いでいるのだ。
海外出張中の馬雲氏は、
「確かに2年前に取材を受けた際『不必要な寄付は1元でいい』と答えたが、その時の発言が、震災後にネット上に流された」
と釈明。5月20日には、2500万元の義援金を寄付することを表明した。
中国最大の不動産ディベロッパー「万科集団」(広東省深セン市)の王石董事長も、同様の憂き目にあっている。ブログに「従業員の皆さんは、義援金の寄付は10元で結構だ」と書いたことから、批判が殺到しているのだ。
同社の広報担当者はJ-CASTニュースに対して
「私たちは、220万元を寄付しています。私たちは1万8000人も抱えている企業であり、従業員の多くは出稼ぎのために都市部に来たばかりの農民工。10元の義援金で『気持ち』を示すことを提案した、というのがブログの本意だと思います」
と説明する。
背景に国内企業と外資との「義援金格差」
馬・王両氏の発言がネット上で一人歩きして、両氏にとっては思わぬ「二次災害」となってしまったが、国内企業と外資との「義援金格差」がこの背景にある。
中国メディアは、日系企業が多額の義援金を寄付していることを大きく取り上げている。現地で報道されているのは、トヨタ、キヤノン、日立製作所など。特に松下電器は、震災後すぐに支援を表明し、「松下電器が5月14日に1000万元四川省に寄付」などと大きく報じられた。
パナソニックチャイナ会長の城阪俊郎氏は、J-CASTニュース記者に対して
「地震発生後、弊社はすぐ中国赤十字社に50万元の義援金を寄付した。その後、災害状況がたいへん深刻だったことがわかったので、松下電器グループは、14日に1000万元の義援金を追加して寄付しました」
と話す。
それに対して、日頃、中国企業がチャリティー活動に対して寄付するのは数万元程度。今回の震災後も、寄付を表明するタイミングや寄付の額に外資と比べて大きな差があったことが、騒動の引き金になったものとみられる。