電力消費量がピークを迎える夏場を前に、「電力が不足するのではないか」と心配されている。東京電力は、2007年7月に起こった新潟・中越沖地震で被災した柏崎刈羽原子力発電所をいまだ稼働できずにいる。夏場はエアコンをはじめ、どうしても消費量が増えるから家計には痛い。おのずと「節電」につながるだろうが、不安は拭えない。電力消費の増加傾向は変わらないなかで、この夏を乗り切れるのだろうか。
効果的な省エネ対策は、家電製品の「買い替え」?
電力不足が心配されているが……
東京電力はホームページで、家庭でできる省エネ作戦を伝授している。よく言われていることだが、壁に隙間をあけて冷蔵庫を置くと、壁にピッタリとくっつけて置くのと比べて1年間3690円お得。炊飯器は、3合のお米を炊くのに5.5合の炊飯器を使うと、1年で約270円損する。炊飯器は炊く容量に見合った大きさのものを使うのが省エネにつながると説いている。
しかし最も効果的な省エネ対策は、どうも家電製品の「買い替え」のようだ。たとえば、冷蔵庫。東京電力のTEPCOくらしのサポートによると、省エネ性能で「トップランナー」機種を選ぶと、1年間で約5050円得するという。「トップランナー」機種とは、家電メーカーが新製品を発売するときに、省エネ性能のトップの機種を基準にして、数年以内に同レベルの省エネ性能を達成しなければならないという制度に基づく製品で、冷蔵庫やテレビ、エアコン、パソコン、蛍光灯器具、電子レンジ、電子ジャー炊飯器、DVDレコーダー、ストーブ、ガス調理器具などに適用している。最新の家電製品の省エネ性能が日々上がっているのは、この制度の賜物ともいえる。
なかでも、エアコンの省エネ性能は著しい進歩を遂げている。11年前のエアコンとトップランナー機種を比べると、1年間で約1万2830円もの差がでる。フィルターの掃除や、設定温度を夏場は1度高くする(冬場は低くする)だけで、約10%のコストを削減できるとされているから、細かな省エネ対策を組み合わせれば、小さくないコスト削減効果が得られるというわけだ。
電気料金も、電力供給量も「原発」しだい
7~9月に適用される電気料金は、標準家庭(1か月あたりの使用量が260~300ワット時)で、月額60~159円アップする。東京電力は137円アップの6797円で、中部電力の159円アップ(6767円)に次ぐ値上げ幅だ。
値上げ幅が大きい理由について、電力業界をウォッチしている岡三証券のアナリスト・宮本好久氏は「エネルギー需要の伸びが高めだと原料価格が割高になりやすい。そのうえ、原子力発電の構成比が低いことがある」と説明する。使う電力が増えれば、それに伴い原料(原油)の輸入も増やさなければならないから、コストアップする。火力発電は「カネ食い虫」。いまの電力事情は、電力供給量も料金も「原発しだい」というわけだ。
東京電力によると、8月に消費される電力の見通しは、平年並みの暑さと仮定した場合、6110万キロワットで、これに対して6470万キロワットを確保できる態勢を敷いている。これは電力不足に陥った2007年8月の供給量(6147キロワット)を上回る。柏崎刈羽原発は停止したままだが、「川崎火力発電所を新たに運転開始することや、停止していた火力発電所の操業再開によって確保する」として乗り切りに自信を見せている。
東京電力は春と秋に展開している「Switch(オール電化)キャンペーン」のテレビCMや予定していたイベント(オール電化体験フェア)を中止した。家庭で「節電」を呼びかけておきながら、その一方で住まいの「オール電化」を推進しては、消費者の理解が得にくいと考えた。
J-CASTニュースが東京電力に「この夏も節電をお願いする」ということになるのか聞くと、「節電のお願い方法も含めて、具体的なことは需給状況をみながら検討していく」と話した。