介護業界では今、人材不足が深刻だ。若者の業界離れが目立ち、養成する専門学校や大学では、年々入学者が減っている。定員割れによる学科の閉鎖も珍しくない。介護の未来を担う若者をどう確保するか、事態は深刻だ。
定員割れで学科閉鎖
2009年度から介護福祉科の募集を停止することになった帝京大学福祉・保育専門学校HP
帝京大学福祉・保育専門学校では、2009年度から介護福祉科の募集を停止することが決まっている。定員割れが続いたことが原因だ。担当者は、「少子化で18歳の人口が減り、専門学校全体が厳しい上に、若者の間で介護福祉士の人気が低下している」と話す。
毎年80人近くの学生が入学する日本福祉教育専門学校介護福祉科でも、同様の傾向が見られる。ある職員は「重労働・低賃金という悪いイメージがぬぐえない」と指摘する。高校に出向き、介護福祉士のやりがいを伝える活動に力を入れている。
厚生労働省の調べでは、介護福祉士の資格者は08年2月末で64万人だった。福祉基盤課によると、「若者の有資格者は減っているが、全体では毎年10万人ずつ増えている」。
一方で、資格者のうち介護現場で働いていない人は20万人に上ることが、05年の調査でわかっている。資格を取って働くが、仕事が厳しく辞める人が続出しているためだ。同省では08年度中に追跡調査を実施する予定だ。
介護サービス業大手のニチイ学館には、介護福祉士が4500人、ホームヘルパーが3万人所属している(07年12月現在)。職員のほとんどが女性で、30~40歳代が多くを占める。介護の仕事では主婦の経験が生かせるため、主婦で資格を取る人が多いようだ。
広報担当者によると、職員の数は横ばいなのに対し、仕事の依頼は増えている。そのため一部のエリアでは1人あたりの労働量が過剰になっていて、「なんとかやっている」という状況だ。
少子高齢化で今後ますます介護の需要が見込まれ、「若者を取り込みたい」と模索が続いている。