成人識別ICカード「taspo(タスポ)」が導入され2ヶ月以上が経過したが、新聞各紙は「町のたばこ屋さん」の「悲鳴」を伝えている。「タスポ」が普及せず、自販機の売り上げが激減。客はコンビニに流れ、「たばこ屋さん」は廃業を追い込まれそうだというのだ。
「隣の店もその隣もみんなやめるんだよ」
自販機の売り上げが落ちているのは確かなようだが・・・
「タスポ」の導入が始まったのは08年3月から。5月1日には北海道・東北・九州・中国・四国地方の1道20県に拡大。7月からは全国で「タスポ」がなければ自販機でたばこが買えなくなる。普及率は地域によって異なるが、概ね喫煙者の10%~20%だ。
朝日新聞08年5月12日付夕刊には、「たばこ屋さん苦境、廃業続々」という見出しが立っている。自販機を「タスポ」仕様に切り替えるための投資が費用対効果に合わない、ということなのだそうだ。切り替え費用の一部はたばこメーカーから補助されるが、それでも数万円かかる。
「隣の店もその隣もみんなやめるんだよ」
「顔と顔を合わせた商売は、もう時代遅れなんだっちゃね」
店主のこうした声が報じられている。北國新聞も08年5月10日付け朝刊で、北陸たばこ販売協同組合連合会の組合員のうち、この6年間で545人(25.7%)が廃業。原因は24時間営業のコンビニの登場や、喫煙率の低下、後継者不足。そして「タスポ」導入で、廃業がさらに増えそうだと書いている。
そんな中で活況なのはコンビニ。毎日新聞などは、コンビニ大手のたばこの売り上げが前年同期よりも6-7割も増えたなどと報じている。このように多くの新聞は、「タスポ」導入は「たばこ屋さん」離れを加速させ、コンビニに有利に働いている、という論調になっている。
「手売りの店では売り上げが2倍になっているところもある」
ただし、全国たばこ販売協同組合連合会は、「タスポ」導入によって「たばこ屋さん」が窮地に立たされている、という報道に異を唱える。
「手売りの店では売り上げが2倍になっているところもあるんです。少なくともタスポが原因で廃業した、という話は一件もありません」
と担当者はJ-CASTニュースに話した。
軒並み「たばこ屋さん」が売り上げを落としているのかというと、そうでもないようだ。広島県に「タスポ」が導入されたのは08年5月1日だが、広島市にある「宗利商店」は導入後に売り上げは2倍になり、3倍にも手が届きそうな状態なのだという。1坪強の販売店だが、開業は昭和20年5月。店主の吉崎和子さんは4代目になる。この店は販売機がなく、すべて手売り。「タスポ」が始まってから新規の顧客が増え、リピーターになっていったのが売り上げ増につながった。吉崎さんはJ-CASTニュースの取材に対し、
「たばこ専門店としての誇りを持って営業していますので、コンビニに客を取られるとか、ライバルだとかなんて思ったこともないんですよ」
と話した。接客から丁寧なタバコの管理まで、専門店としての「誇り」を貫いてきたのだという。
吉崎さんはJ-CASTニュースにこう話している。
「タスポ導入でタバコ離れが進むことを危惧しています。私たちたばこ屋は、今が頑張り時なんですよ」