トヨタ自動車の2009年3月期の連結業績見通しで、営業利益が前期比29.5%減の1兆6000億円と、9年ぶりに減益に転じる見通しであることが分かった。ここ数年の日本企業の過去最高益更新をけん引してきた自動車業界。その最大手の減益転落によって、日本経済の先行き悪化懸念が膨らんでいる。
北米での大型車不振が大きな不安材料
トヨタの09年3月期の売上高は同4.9%減の25兆円、当期(最終)利益は同27.2%減の1兆2500億円と見込んでおり、いずれも前期を下回る見通しだ。
減益要因は、自動車の世界最大市場である米国の景気低迷に、円高、原材料高を加えた「三重苦」。特にトヨタにとって影響が大きいのは、急速に進んでいる円高だ。トヨタの08年3月期の想定為替レートは1ドル=114円だったが、09年3月期には同14円高い1ドル=100円と設定しており、これだけで営業利益は6900億円も吹き飛ぶ計算だ。
かつては「ドル箱」といわれた米国市場が低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題で痛手を負い、低迷しているもの大きい。トヨタは09年3月期の連結ベースの販売台数を同14万7000台増の906万台と予想するが、北米では同18万8000台減の277万台に落ち込むと見ている。高い利益が見込める大型車の売れ行きが鈍っていることが特に大きな不安材料だ。
原材料価格の高騰も厳しい。自動車用鋼材価格の値上げ幅は前期の5~10%を超えるのは必至な情勢。コスト増は3000億円を超える可能性もあるという。
右肩上がりで来た体質をもう一度見直し
金融を除く東証1部上場企業の08年3月期決算は5年連続の経常最高益を更新する見通しだ。その原動力になってきたのは、自動車や電機など輸出型の製造業といえる。少子高齢化などで国内市場が縮小する中、円安という追い風に乗り、消費旺盛な米国や経済発展が続く中国など新興国向けの販売増で補ってきたのが、輸出関連企業がこれまで好業績を上げてきた大きな背景だ。
しかし、頼みの米国市場はサブプライム問題から立ち直れず、景気後退懸念が高まっている。サブプライム問題に端を発した米国の景気低迷やドル安は、急激な円高や原油高、原材料高を招いており、輸出型の製造業にとって良好だった環境は、今や激変しようとしている。
トヨタの減益転落見通しは、日本企業が直面している厳しい経営環境の象徴だ。トヨタの渡辺捷昭社長は決算発表の会見で、「為替や原材料価格の影響を吸収できるかで、我々の真価が問われる。右肩上がりで来た体質をもう一度見直し、徹底的に無駄を排除する」と述べたが、日本企業全体が、まさに正念場を迎えているといえる。