ファイル共有ソフト「Share」を使って、人気アニメ「コードギアス」「機動戦士ガンダム」などを無断にアップロードしていたとして、会社員男性など3人が著作権法違反で逮捕された。インターネット上で彼らは「最速の職人」などと呼ばれ、一部では「間違っていたのは職人じゃない」といった声さえ上がっている。なぜ彼らはもてはやされたのか。
「Share」利用しているアニメファンに有名な人物
京都府警などは2008年5月9日、ファイル共有ソフト「Share」を使って、テレビで放送されたアニメ番組を無断でアップロードして送信していたとして、神奈川県川崎市の会社員男性(34)、東京都日野市の会社員男性(41)、広島県広島市の大学生(21)の3人を、著作権法違反(公衆送信侵害)の容疑で逮捕した。
コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)によれば、これまで「WinMX」、「Winny」の利用者が著作権侵害で逮捕されているが、「Share」の利用者が逮捕されたのは、今回が初めて。
会社員男性(34)は、08年4月13日、サンライズが著作権を持つアニメ「コードギアス 反逆のルルーシュ R2 第2話『日本 独立 計画』」を、ファイル共有ソフト「Share」を通じて権利者に無断でアップロードして不特定多数のインターネットユーザーに対して送信できるようにしていた疑い。会社員男性(41)は08年4月1日に、大学生(21)は08年4月6日に、同社が著作権を持つアニメ「機動戦士ガンダムOO(ダブルオー) 第25話『刹那』」を「Share」を通じて権利者に無断でアップロードした疑いが持たれている。また、この大学生(21)は「他のユーザーが喜んでくれるのが嬉しかったため、アップロードを繰り返した」などと供述しているという。
ACCSによれば、これら3人の男性は大量にアニメ番組をアップロードし続け、巨大掲示板「2ちゃんねる」で話題となっていた人物という。実際ネット上では、アニメ番組放送後にファイル共有ソフトを素早くアップロードし、「最速の関東職人」「安心と信頼の元エース」などと呼ばれ、「Share」を利用しているアニメファンのあいだでも有名な人物だったようだ。さらに逮捕後には、「間違っていたのは職人じゃない!世界の方だ!」「神は死んだ」「明日のギアスどーすれば良いんだよ」など書き込みがネット上に相次いでいる。
地方では最新アニメ番組視聴するのは難しい
あるネット業界関係者は「特に地方にいると、キー局で放送しているアニメが何をやっているのか分からない。Shareを通じてでも見たいというユーザーは多いのではないか」と指摘している。今回、違法にアップロードされたのはいずれも、テレビキー局で放送されたアニメ番組で、一部の地域では視聴できない地域もある。また、放送後にビデオオンデマンドサービスで過去のアニメ番組を見るサービスもあるが、いずれも実際の放送から数週間以上経ってからの放送となり、地方在住の人にとってはなかなか最新のアニメ番組を視聴するのは難しいという事情もある。そのため「地方じゃ全然アニメやらねーのはおかしくね」といった声が上がり、一部でこうした違法アップロードがもてはやされたようなのだ。
ACCSによれば、07年9月時点でファイル共有ソフト「Winny」では約26万4000の利用者、「Share」では約20万の利用者を確認しており、「Winny」の利用者が減少傾向にある一方で、「Share」の利用者が増加してきているという。
同協会は、Shareを通じて著作物をダウンロードした利用者は、即時にアップロード行為者になり、違法な送信を自ら行う可能性があるとして、「安直な気持ちでファイル共有ソフトを利用している利用者に対しては、今すぐその利用をやめるよう、強く求める」と述べている。