中国ではいま、デジタルカメラの普及段階に入り、プリンターなどのOA機器も徐々にその市場が形成されつつある。デジタル製品は日本や欧米で1桁の成長を維持しているが、中国ではその数倍の成長戦略を持たないと、絶好のビジネスチャンスを逸してしまうかもしれない。
年間900万台を売っても、普及率は1桁
強気の戦略をたてるキヤノン(中国)の小沢社長
2007年に中国でのデジカメの販売台数は900万程度。すでに700万台規模の日本を上回ったが、普及率はまだ1桁にも達していない。
デジタルカメラといえば、世界どこでもほぼ日系メーカーの独占市場である。中国の秋葉原である中関村にある電子電機製品を取り扱う店に行けば、入り口のもっともいい場所に、キヤノン、ソニー、パナソニック、オリンパス、カシオなどの日系メーカーが連なり、デジカメの「大波」に圧倒されてしまう。韓国メーカー、中国メーカーの製品はないわけではないが、値段、品質、ブランド力、いずれも日系メーカーと比べるとまだ劣っている。
しかし、月収1000元ぐらいの人に、日系メーカーの1000元から2000元ぐらいのデジカメを買ってもらうのは、易しいことではない。小沢社長は、紙にピラミッドを書いて、一番先端のところに一本の線を引き、「我々は、まだこの富裕層に製品を買ってもらっているだけ。中国は、毎年2桁の成長率を維持しており、市民所得はどんどん高くなっていき、われわれの製品が買えるお客さんは多くなってくる」と解説する。
8月8日に始まる北京五輪、2009年は中華人民共和国が設立して60周年、2009年の上海万博などなど、中国では大イベントが目白押しだ。「市場が爆発的に成長する要素が揃った。中国市場はもっとも速く発展する時期を迎えている」と小沢社長は付け加える。
アフターサービスにも力を入れる
デジカメが2桁の普及率になると、人口の10%としても中国には1.3億台のニーズがある。中国ではほぼ4000万台か5000万台のデジカメが販売されたが、10%の普及率にあたる1.3億台になるまでまだ数年はかかりそうであり、小沢社長が大胆に30%成長の目標を設定したのは、市場が爆発的に成長すると確信したからだろう。
ただし、数多くの日系メーカーの中から、キヤノンの製品を買ってもらうためには、それなりの工夫も必要である。
キヤノンのアジア地域販売促進会を取材した。冒頭の挨拶に、小沢社長はまず中国語の北京語(マンダリン)で挨拶し、そのあと、香港、広東などで使われている広東語、英語、そしてマレー語なども駆使して、会場の雰囲気を熱くした。「宴会の挨拶も極力中国語でしている。大事な話は、英語でしゃべる」。中国語をそれほど勉強していない小沢社長は、言葉には細心の注意を払う。
北京では製品を修理するアフターサービスセンターをメーカーが設立する企業はそれほど多くない。小沢社長はサービスセンターの充実に力を入れていて、「これも他社さんとの差異である」と言う。
社員用の手帳に、「目標は小さなものでなく、大きな目標を作り、有言実行で挑戦しろ」などの社長が自らまとめた「販売憲法」17か条を印刷し、社員全員に徹底してもらっている。ここでも大きな目標が強調されている。