住宅ローンにも影響 長期金利これからもっと上がるのか

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   長期金利が急上昇し、国債が暴落している。長期金利の代表的な指標である新発10年もの国債の利回りは2008年5月7日、一時1.680%を付けた。3月末が1.275%だったから、0.405%も上昇したことになる。逆にいうと、国債価格が下落したわけだ。長期金利の上昇基調は世界的な傾向でもある。その背景にはなにがあるのか。

ヘッジファンドが国債を売り出した

長期金利は上昇傾向にあるが、国債価格は下落している
長期金利は上昇傾向にあるが、国債価格は下落している

   長期金利が上昇する背景には、07年夏以降から金融市場を揺らしてきた米国のサブプライム問題が落ち着いてきたことがある。これまでは投資マネーがリスクの高い株式投資などを避けて安全な国債に流れていたが、その資金が株式市場などに戻ってきた。株価も少しずつだが上がりはじめた。

   加えて、海外投資家の動きもある。国際金融アナリストの枝川二郎氏は、「ヘッジファンドの資金調達が厳しくなっており、国債を含めた資産を処分していかなければならない状態になっている」と指摘する。サブプライム問題の影響で大手外銀は貸し出しを抑えはじめている。投資資金を借り入れでまかなっていたヘッジファンドは、急いで手元に資金を用意する必要があった。流動性の高い国債は引き揚げやすかったわけだ。「国債価格の下落は日本だけではない。米国や欧州でも下がっている」(枝川氏)という。

   財務省によると、外国人投資家が国債を保有する割合は全体(約546兆円、07年度見込み)の約7%を占める。国債の保有は、その大半が銀行や保険会社などの機関投資家。海外投資家はまだまだ少ないが、財務省は欧米、アジア・豪州と、わざわざ現地にまで出向いてIR活動を展開するほど積極的に保有を促しているところ。

   J-CASTニュースは財務省に、海外投資家の保有が増えたことで彼らの「売り」の動きがすぐに響いたのではないか、と聞いた。すると、「そういった側面もないとは言わないが、保有が(国内の機関投資家に)偏るとマーケットが壊れる可能性も高まる。(機関投資家で)まかない切れなくなっても困るので分散化することも必要。(海外投資家は)個人投資家とともに力を入れている」(国債業務課)と説明した。

   枝川氏はこう付言する。「わずか7%というが、その人たちが売買するだけでもマーケットは揺れる。米国や欧州で売られた影響で、日本が引きずられることだってある」

当面2%を超えることはない?

   長期金利の上昇要因には、世界的にエネルギーや食料価格の高騰で物価が上昇し、「インフレ」が高まっていることもある。サブプライム問題で段階的に利下げを繰り返した米国のFRB(連邦準備制度理事会)も、利下げを打ち止め。「米国景気は、意外に良さそうといった見方がある」(枝川氏)という。

   2~3月に欧州に漂っていた利下げ気配も後退。日本も景気の停滞で「利下げ」が話題にはなったものの立ち消え。目下のところ、日銀の金融政策は「利下げもないし、利上げもしない」状況だ。日銀ウオッチャーで、東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは、「(長期金利は)量的緩和のころよりも下がっていましたから、それが調整された」とみている。

   海外投資家の「売り」に翻弄されている国債だが、長期金利のさらなる上昇はあるのだろうか――。前出の加藤氏は「急激な金利上昇にも限界があります。(いまの上昇が)日本の財政赤字の不安で売られているわけではないことがその理由です。当面2%を超えることはないでしょう」と話す。

   とはいえ、みずほコーポレート銀行住友信託銀行三菱UFJ信託銀行などは長期金利の上昇に合わせて、大企業向け融資の指標となる長期プライムレート(最優遇貸出金利)を0.30%引き上げ、年2.40%にした。5月9日(信託2社は12日から)以降の新規借り入れ分から適用するが、借り入れを望む企業にとって金利上昇は痛い。

   住宅ローン金利にも影響を及ぼし、住宅金融支援機構の長期固定型住宅ローン「フラット35」の5月の適用金利は、返済期間21年以上の場合で年2.950~3.550%になっている。上昇基調のままなのか、下がるのか、住宅の購入を検討している人にとっても悩ましいところだ。

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