残高減少しては困る理由
定額貯金といえば、預入期間10年の半年複利。しかも6か月経過後の引き出し自由という流動性と定期性を兼ね備えた商品で、高金利時代には10%を超える利回りで人気を博した。いまの「巨大ゆうちょ」をつくった原動力。その後の預金金利の自由化やゼロ金利政策を経て、いまでは「ふつうの商品」になってしまったが、それでも1年で10兆円弱の金額が満期を迎えるのだから、その資金に目をつける金融機関は少なくない。
10年前の定額貯金の金利は年0.2~0.3%。ゆうちょ銀行は「100万円預けた人で数万円程度の利息になります」という。いまの金利は年0.407%なので、10年前よりはいい。
ここ数年の「貯蓄から投資へ」の流れにあって、ゆうちょ銀行も投資信託の販売に力を入れてきた。それもあって定額貯金の満期金も、投資信託に回してもらってきた。株式市場などが混乱して投資信託の購入を見合わせる人が増えるなかで、貯金が他の金融機関に流れているのは確か。
「いずれ投資信託を買ってもらうにしても、手元においてもらっていればセールスしやすいですからね」(東京都内の大手信金幹部)と、「繋ぎとめ」キャンペーンの狙いを読む。
じつは、ゆうちょ銀行にはこの10兆円弱を必死になって繋ぎとめなければならないわけがある。同行には、通常貯金や定額貯金などを合わせて「一人あたり1000万円以下」という規制があって、民営化されたことで、現在その規制撤廃を求めているところ。
「一人あたり1000万円の枠を取り払えと言っていながら、どんどん貯金残高が減っていってはつじつまが合わない」(銀行関係者)
貯金残高は、ゆうちょ銀行全体でも2000年3月期の260兆円をピークに、その後は年間10兆円規模で減っている。貯金は収益の源泉にもなるだけに、業績にも響いてくる。もはや放ってはおけない状況になっているのだ。