取引先の「業種」にクレーム
たとえば、昨年立ち入り検査のあった、ある地銀では「融資先の業種変更を迫られた」と話す。地方の老舗企業が、バスやレジャーランド、ホテルなど複数の事業を展開するのはめずらしくないが、銀行ではその「業種」を起業当初のままで管理していたりする。
関係者は「企業の生い立ちであり、現時点でもうかっている事業が必ずしも管理上の業種と同じではないことはある」という。金融庁は「実態に即して」と指導するが、検査時には業種ごとの融資比率のバランスもチェックする。「たとえば、東京の老舗企業はいまや収益の多くを不動産でまかなっている。それをもって不動産業に業種変更しろといったら、大半が不動産業者になってしまう。それはもう嫌がらせとしか思えない」と憤る。
3月に金融検査が終わった、ふくおかフィナンシャルグループが4月7日に発表した業績の下方修正には、地銀関係者がショックを受けた。理由は、熊本ファミリー銀行の損失が膨らんでいたからだ。熊本ファミリー銀行は2007年4月、ふくおかFGの傘下に入ったときに多額の引当てを積んで不良債権を一掃したはずだった。ところが、この3月期にも157億円の当期赤字を計上。ふくおかFGは有価証券の減損処理とともに「保守的な引当て強化」を主因にあげるが、「本庁による金融検査の際に積み増しを求められた」と見る向きは多い。
不良債権処理が終息し、金融庁が立ち入り検査で資産査定にクレームをつけるようなことはここ数年なかった。地銀関係者のあいだでは、「当局がふくおかFGに対して、福岡、親和、熊本ファミリーの3行合併を迫った」との話までがまことしやかに流れてもいる。
金融検査について、金融庁は「金融検査マニュアルにそって実施しており、立ち入り検査に問題はない。金融検査を理由に金融機関が融資審査を厳しくすることはないし、そのようなことがあれば情報を寄せてほしい」としている。