経営者や著名人でない一般の人が書くブログもいまひとつさえない。書いても反応がない。「スパム化」しているとも言われる。ITジャーナリストの井上トシユキさんに現状と、背景を聞いた。
お金をもらえないし、ヘタすれば炎上
「ブログ」の将来を語る井上トシユキさん
――一般の人が書くブログは新聞記事を引用し、感想を書くだけのものもあって、ホントに読まれたいの?という感じもします。
井上 自分が思ったことを書いて、公開するだけで快感、ということなのかもしれません。日本人は文章を書く訓練を学校でそれなりに受けている。そこで「自分も書いてみたい」と始めるんでしょうが、読んでもらえる文章、共感を呼ぶ意見というのは、やはり簡単には書けない。書いても反応がない、お金をもらえるわけでもない、ヘタすれば炎上するとなると、生活のなかの優先順位は落ちていく。とりあえず、暇つぶしに無難なことを書いておくというのでは技量も上がらない、という悪循環が起きているのでしょう。なんにでも最初からプロはいないんで、そこを頑張っていくと良いんですけどね。
――では、ブログの可能性はどこにあるのでしょうか。
井上 『2ちゃんねる宣言』を書いた頃、「2ちゃんねるの魅力は?」とよく訊ねられました。それで、コスメや家電などの「板」が面白いですよ、と答えていました。匿名だけど、実際に商品を使った人が「ここが良い、ここが悪い」と自由に書き込んでいた。あの頃は、メーカーの思惑はまだ入ってませんでしたから。こういう口コミは、ボトムアップの消費者運動に近いものがあって、これがうまく成長していくと偽物や劣悪な物が市場から駆逐されてしまうんじゃないか。それが、ネットによる「革命の一つ」なのではないか、と。言っていたんです。ただ、それは形を変えて出て来てしまった。
――いわゆる「口コミマーケッティング」ですね。
井上 口コミマーケティングを仕掛けた人は、ブログ発信で「口コミを作る」と言っていました。まあ、バブルの頃も女子高生の口コミを仕掛けるとかあって、手法自体は新しいものでもなんでもないんですけど。口コミは作るんじゃなくて、元来は「起きる」ものでしょう。それで、出発点はどうするのか?と聞いたら、「有名人に起点になってもらう」と。それって「広告塔」だし「ヤラセ」じゃん(笑)。で、ブログは企業資本から離れた純粋なものというイメージを利用しようとして、逆に裏側がバレちゃった。企業のヒモ付ブログを読むぐらいなら、同じスポンサー付きでもテレビのほうが面白い。目の敵の「マスゴミ」であっても、訓練された記者が取材した新聞や雑誌を読んでるほうが得るものがある。こうなると、ブログのメディアとしての位置づけが相対的に低下するのは、仕方のないことだと思います。