たった26分短縮に2600億円 九州新幹線・長崎「壮大なるムダ遣い」

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   九州新幹線・長崎ルートが着工された。在来線の特急「白いかもめ」が1時間57分で走る長崎-福岡・博多間を、新幹線は26分短縮するという。この26分に2600億円超が投じられる。しかも実質的な時間短縮は「13分30秒」しかない。「税金のムダ遣い」に限りなく近いのではないか。

建設中止を求める県民の会が街頭署名活動

現行の「白いかもめ」は博多-長崎を2時間弱で結ぶ
現行の「白いかもめ」は博多-長崎を2時間弱で結ぶ

   2008年4月28日、佐賀県嬉野市で九州新幹線・長崎ルートの武雄温泉(佐賀県)-諫早(長崎県)間45キロの着工式が華やかに執り行われた。この日、長崎市では長崎「新幹線」の建設中止を求める県民の会が「不要不急の公共事業」のチラシを手に行った街頭署名に列ができた。

   長崎「新幹線」の建設中止を求める県民の会は、長崎県や佐賀県、JR九州が説明する長崎-博多間の短縮時間「26分」には「粉飾がある」と指摘。長崎ルートの建設に反対していた佐賀県鹿島市も、「巨額を投じる新幹線建設から生まれる時間短縮効果はその半分程度」と批判している。

   JR九州によると、長崎ルートに導入される新幹線はフリーゲージトレインという在来線の狭い軌道を走ることのできる新しいタイプの新幹線で、古川康・佐賀県知事も「多くの鉄道ファンが見に来てくれるはず」と期待するほどの、長崎ルートの「目玉」。ところが、これが「アキレス腱」にもなっている。

   ひとつは安全性の問題。「在来線の1067ミリという狭軌の線路で、本当に新幹線並みのスピードを出すことができるのだろうか」(建設中止の県民の会・中里研哉事務局長)と疑う。そして、時間短縮効果の問題だ。長崎ルートは在来線の軌道を使うので、現在の長崎本線の特急「白いかもめ」も走ることができる。

   長崎県の説明では、長崎-博多間で短縮できる「26分」のうち、5分が新鳥栖(仮称、佐賀県)-博多間を走る九州新幹線(フル規格)での短縮。また、途中停車駅が「白いかもめ」の6駅から3駅に減ることでの時間短縮が7分30秒になるので、合計「12分30秒」はいまの「白いかもめ」でも短縮は可能。つまり、新幹線の実質的な時間短縮効果は「13分30秒」しかない。

   「武雄温泉-諫早」の新幹線区間の建設に投じる費用が2600億円、肥前山口-武雄間の在来線区間の複線化に120億円、これに新幹線ホームやJR線の立体交差化などの費用が加われば、3000億円を突破することは確実。そうなると、1分間短縮するのに230億円もの費用がかかるから、まさに「壮大なムダ遣い」だ。

長崎―博多片道2500円が5000円程度に跳ね上がる

   ちなみに、運賃をみても特急「白いかもめ」を使った場合、長崎から博多へは片道2500円(4枚綴り乗車券)。「若者の利用が多い」という高速バスは片道2000円(4枚綴り、所要時間は2時間強)。これが新幹線を使うと、片道5000円程度に跳ね上がると試算する。  新幹線建設中止の県民の会・中里事務局長は、「新幹線のコースはトンネルと高架ばかり。観光のための新幹線というのに、これでは観光客もありがたくないでしょう」と、計画見直しを求めて声を嗄らす。

   長崎ルートは07年12月、JR九州が新幹線と在来線との「経営分離」を行わないことを条件に、沿線自治体の同意なしに建設できるようになったことで、一気に動き出した。佐賀県議の太田記代子氏は「佐賀、長崎、JR九州の、あの骨抜き合意がなければ、こんなには急転しなかったでしょう」と証言。「長崎県にはいま決めなければ、永久に新幹線は来ないという危機感があったというが、急ぐ理由がわからないし、最近の古川(佐賀県)知事の豹変ぶりには驚かされる」と話す。

   沿線自治体を揺さぶり、結果的に「骨抜き」にしたのは各自治体の財政状況にある。太田議員は、「県は新幹線建設に賛成する自治体には景気振興策としての予算をつけたり、反対派にはいままであった予算を取り上げてしまったり、予算を武器に一つひとつ籠絡。そうやって切り崩し、最後までウンと言わなかった鹿島市と江北町をはずしてしまった」と、あまりにえげつないやり方に憤る。

   受け入れた自治体側にも、「国策でついた2600億円が地域に投下されるので、長崎、佐賀の両県にとってはわずかな予算で地元が潤うという目算がある。どの自治体も予算不足なので、国の予算で仕事がまわってくるのであれば、そうしたいという思いは強い」(中里事務局長)とみている。

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