枝川二郎のマネーの虎
サブプライム問題のウソ・ホント(2) 投資銀行「何があってもつぶさない」理由

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債券や株式のマーケットで投資銀行の存在感は圧倒的

   さて、投資銀行がサブプライムによる損失を膨らませたのはCDOを自分自身で抱えてしまったから。右から左へ販売するだけであればそれほどの損失を生じることはなかったはずだ。さらにはリスクをヘッジ(回避)していたはずの部分についても、モノラインと呼ばれる金融専門の保険会社の経営がおかしくなったり、また傘下のヘッジファンドやSIV(証券化商品に投資するための投資子会社)の損失を引き受けなければならなくなったりした結果、損失がさらに増大した。

   とはいえ、現在の債券や株式のマーケットで投資銀行の存在感は圧倒的であり、それにとって代われるようなプレーヤーは存在しない。そのため、当局としては何があってもつぶすわけにはいかない。巨額な赤字を被ったメリルリンチがアラブのSWF(政府系ファンド)や日本のみずほフィナンシャルグループなどが次々に増資に応じて事なきを得たのも、業界第5位のベア・スターンズがモルガン・スタンレーに救済されたのも、その証しといえる。

   ウォール街の投資銀行初の黒人CEOとなったスタンレー・オニール氏はサブプライム問題の責任をとって、メリルリンチの社長の座を追われた。しかし、その陰で彼がメリルリンチの幹部にエジプト人や韓国人、インド人などをそろえ、伝統的な白人男性優位の秩序を壊したことが大いに反感を買っていたこともまた事実だ。

   いまや黒人や女性でも米大統領になれる時代であるが、「宗教と人種」を背景にした投資銀行の「伝統」はまだまだ揺るぎないものなのかもしれない。


++ 枝川二郎プロフィール
枝川二郎(えだがわ じろう)国際金融アナリスト
大手外資系証券でアナリストとして勤務。米国ニューヨークで国際金融の最前線で活躍。金融・経済のみならず政治、外交、文化などにもアンテナを張り巡らせて、世界の動きをウォッチ。その鋭い分析力と情報収集力には定評がある。


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