富山市の温泉は混浴を止める
混浴では、「凝視」といった女性客のマナー違反はないという。なぜ、最近の男性客は、マナーが悪くなったのか。
酸ヶ湯温泉の従業員は、「教育や生活環境が変わってきて、辛抱とか苦労とかが死語になったからかねえ」と首を傾げる。
温泉観光士の谷口さんは、「最近は、団体客が少なくなって、ネットの検索で混浴が目に留まって来る男性客が多い。そして、その伝統などを知らないために、本当に体験してみるとびっくりして女性をまじまじと見るようです」と分析する。ただ、さすがに女性の裸に触れたり、写真やビデオを撮ったりする犯罪行為はまずないという。
こうしたマナー低下は、ほかの混浴でも問題になっている。
例えば、岡山県の湯原温泉にある露天風呂「砂噴き湯:砂湯」。混浴の川湯になっており、谷口さんによると、無料で自由に入れるため、特にマナー違反が深刻だという。「温泉なので魚もいないのですが、勘違いしたように釣りざおを持って女性の方へ寄ってくるんですね。また、広くてあちこちに岩があるので、隠れながらそっとそばに寄って盗み見る人もいます」
マナー低下から、混浴を止める温泉も出てきている。富山市の越中山田温泉「玄猿楼」では、こうした理由もあって、5年ほど前に内湯の混浴をなくした。「快楽秘湯表編」というサイトの温泉体験談コーナーでは、こんな利用客の投稿が出ていた。
「半年程前テレビで紹介されたこともあり他府県からも来るようになって、ゲームセンターの所で若い女性が混浴に入るのをじっと待っている奴らが増え、女性客からクレームもあり客が減ってくるようなので長く続いた混浴を中止したそうです。こうして混浴が減っていくのですね」
前出の谷口さんは、寂しそうにこう話した。
「温泉なので、水着は禁止ですし、バスタオルでは物足りないでしょう。このままでは、浴場内に仕切りやブラインドを設けるしかありませんね。のどかで和気あいあいとして、寛容で協調的なのが、混浴の文化なのですが」