2008年5月11日の「母の日」を前に、カーネーションの出荷がピークを迎えている。今年は定番の赤のほかに、ピンクやオレンジ、グリーンと豊富な色が花屋に並ぶ。しかし出荷する農家は原油の値上がりに「とてもコストをカバーできない」と悲鳴を上げている。さらに安い輸入品にも押され、廃業する生産者が後を絶たない。
4カ月間で、400万円の暖房費がかかる
愛知県一色町は、年間約1800万本のカーネーションを生産している。出荷量は全国で1、2位を争う。
「原油高の影響で温室の暖房費が約2割上がった。とてもカバーしきれない」
生産者からこんな悲鳴があがっている。ある農家では、07年12月から08年3月までの4カ月間で、400万円の暖房費がかかった。「一時的ではなく、今後も原油高が続くことを考えると、もうどうしようもない」と途方にくれている。
近年の温暖化も悩みだ。カーネーションの苗は6月に植えつけ、夏場は根がはるための重要な時期だ。07年は猛暑で温室に遮光用の幕を張った。08年も猛暑となれば、さらなる対策で費用がかさむ。
相次ぐ出費に、生産者が所属する「一色町花卉温室園芸組合」副組合長の鈴木勇さんは、「消費者のニーズが高い色は単価が高くなる。市場と相談して見極めていきたい」と話す。ただ、カーネーションには200種以上の品種があり、ニーズを見極めるのは結構難しい。
町の花屋では、母の日を前に定番の赤いカーネーションを多く揃えている。その多くは外国産のカーネーションだ。「フラワーショップ夢や」(東京都大田区)では、外国産を100円から販売している。
「品質がよくなり、国産との差が縮まっている」
産地は主に、中国、コロンビア、トルコだ。店長は、「品質がよくなり、国産との差が縮まっている。素人には、違いがわからない」と話す。
また、保存方法が進化したことも、外国産の増加に拍車をかけた。10日から2週間くらいは保存ができ、空輸によるダメージはほとんどないようだ。
同店では、国産カーネーションも販売している。平均200~250円、特殊な品種は350円と外国産の2倍以上だ。国内に流通している国産の割合は約6割だ。後継者不足や相次ぐコスト増から、廃業する生産者が後を絶たない。国産カーネーションはもうだめなのか。
カーネーションを専門とした種苗会社、フジ・プランツ(愛知県一色町)の鈴木善和社長は、「外国産では作られていない希少な品種を育て、オリジナル色を出していくしかない」と話す。最近では、ベージュ、グリーン、アプリコットの色が市場では人気で、高価格で取引されている。赤や白の定番タイプに比べて量は限られるが、隙間を狙って生き残るしかないようだ。