北京五輪の競泳日本代表に「最大の敵」が登場した。それはスピード社の競泳用水着「レーザーレーサー(LZR RACER)」だ。この水着を着用した選手は次々と世界記録を更新。スピード社側も「当然の結果」と自信を見せる。しかし、日本水泳連盟が国内メーカー3社と契約しているため、日本代表選手は着用できない。「このままではオリンピックでは勝てない」という関係者からの声も上がるほどだ。
スピード社の水着で出場は「契約違反になる」
世界記録が続出しているスピード社の「LZR RACER」
「ここまで違うと、このままオリンピックに行くのは大変危険です。道具の違いで結果が変わってきたら大変です。100mで0.5秒上がれば、(中村)礼子は59秒4、(北島)康介は世界記録」
と2008年4月24日に自身のブログに書き込んだのは、北島康介選手や中村礼子選手を指導する東京SCの平井伯昌コーチだ。
東京都内で合宿している日本代表選手数人が、スピード社の水着を初めて試着したところ、練習着着用時に比べて25メートルで0.5秒前後速いタイムが出たのだという。一部報道によれば、選手からは「全然違う」「ハンディを負ってしまう」といった声までが上がったというのである。
日本水連はミズノ、アシックス、デサントの3社と契約しているため、日本選手はスピード社の水着を着用して北京五輪に出場することができない。日本水連は、代表選手がスピード社の水着で出場した場合、「契約違反になる」との見方を示した上で、
「(3社との)契約が残っている。現状でアナウンスできることはない」
と話している。ある関係者も「3社とオフィシャルサプライアー契約を結んでいる以上、何とも言えない」と漏らしている。平井コーチがブログのなかで「解決方法としては、3社に企業努力を求めるのが筋です。さて、どうなることやら」と綴っているように、日本チームとしては3社のこれからの開発努力に期待するしかないというのが実情だ。