日本証券業協会は2008年4月8日の臨時理事会で、傘下の新興企業向け市場、ジャスダック証券取引所を大阪証券取引所に経営統合することを正式に決めたが、ジャスダックは統合に反対する姿勢を変えておらず、統合問題の出口は依然見えない。日証協には、6月のジャスダックの株主総会で、統合に反対する取締役の解任を求める強硬論が渦巻く。一方、大証には、決着が付かない状況に嫌気し、統合撤回論も浮上しており、市場再編の混迷は続きそうだ。
6月開催の大証株主総会で、経営統合諮る計画
「(関係者に)説明不足だったと反省している」
日証協の安東俊夫会長は15日の記者会見で、日証協が保有しているジャスダック株(発行済み株式の72.6%)の50%超分を原則として大証に売却することを正式に決めたものの、統合計画が進まないことを陳謝した。証券業界に「日証協が強引に統合を進めたので、ジャスダックの態度が硬化して統合がうまくいかない」という批判があることも意識した発言とみられる。日証協関係者は、「強気の安東会長が自らの不手際を認めたのは珍しい」と打ち明ける。
経営統合が遅れていることで、事態の推移を見守ってきた大証の姿勢にも変化が出始めている。大証首脳は、「ジャスダックが統合に納得するまで静観する」というスタンスだが、別の大証幹部は、「6月に開催する大証の株主総会で、株主に経営統合を諮りたいが、混乱が続けば計画白紙も選択肢になる」と、統合撤回の可能性も示唆する。
一方、統合を拒んでいるジャスダックでは、筒井高志社長が統合への地ならしに奔走している。筒井社長は、「"親会社"の日証協の決定は尊重する」として、統合に反対している取締役と個別に会談。「大証との統合は新興市場の発展につなげるために必要」などと訴えている。
統合に反対する取締役解任も想定
ただ、ジャスダックが3月24日に発表した提言書「我が国の新興振興市場のあり方とジャスダック証券取引所」が、統合を拒否することを、正当化している面がある。提言書の最後の部分には、「特定の一人の株主の意向だけによって、市場の運営が左右されてはならない」と明記。ある取締役は「提言書はジャスダックの方針をまとめたものであり、矛盾する行動は取れない」と、筒井社長に説得されても、統合に反対する姿勢を変えていない。非上場のジャスダック株式には譲渡制限があり、ジャスダック取締役会の承認がないと売却できないため、ジャスダックが譲渡制限を盾に徹底抗戦する可能性もある。
打開策としては、日証協が、ジャスダックの株主総会で、統合に反対する取締役を解任することが想定される。日証協内部では、「改革には痛みが伴う」(幹部)と解任を是認する声がある。しかし、安東会長は、「大人同士なので、落としどころもある」と述べるなど、強攻策に消極的な姿勢を見せており、日証協内部も意見が割れているのが実情だ。日証協が打ち出した市場再編が決着しないことで、証券業界では、日証協の求心力の低下を懸念する声も出始めている。