日本音楽著作権協会(JASRAC)が公正取引委員会から立ち入り検査を受けた。市場を独占し、新規事業者の参入を排除しているという疑いだ。かねてからJASRACを敵対視しているユーザーが多いインターネット上では、「公取GJ(グッド・ジョブ)」といった書き込みが相次いでいる。しかし、競合社からしてみると「JASRACの独占状態を事実上ほっておいて、公取委は何で今さら動き出したのか」というのが本音のようだ。
「包括契約」は新規参入を阻害している疑いがある
公取委が立ち入り検査した日本音楽著作権協会
JASRACが2008年4月23日に公取委から、独占禁止法違反(私的独占)の疑いで立ち入り検査を受けた。同協会への立ち入り検査は初めてという。
JASRACは、NHKや民放各局と1979年から、「包括的利用許諾契約」を結んでいるが、それは、放送した回数や時間ごとに計算するのではなく、曲数に関係なく事業収入の1.5%に当たる金額を放送使用料として徴収するというもの。
膨大な楽曲を使用する放送事業者にとっては、曲数や時間を計算する負担がなくなるというメリットがあり、米英の放送局でも「包括契約」が結ばれているようだ。その一方で、「どんぶり勘定」といった指摘もあり、新規参入業者と放送局側が曲ごとの契約をすると、その分だけ放送局側の負担が増してしまうから、新規参入を認めることに慎重にならざるを得ない。公取委はこれを「市場を独占し、新規参入を阻害している疑いがある」と判断したようだ。
ある関係筋は、
「2001年の著作権等管理事業法が施行され、新規参入が可能になったにもかかわらず、新規参入がほとんどできていない。海外で包括契約があるといっても、(JASRACが)わが国の市場を独占し、包括契約によって競争を制御させていることには変わりはない」
とJ-CASTニュースに対して話している。一方、JASRAC広報部は、
「まだ具体的な指摘を受けているわけではないので詳しいことは分からないが、検査に全面的に協力している。結果を踏まえて対応をはかりたい」
と述べている。
デジタル化が進めば、包括契約のあり方も自ずと変わる
競合関係にある音楽著作権管理会社ジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)の荒川祐二社長は、公取委の立ち入り検査について「何でこのタイミングなのか」と漏らす。
「管理事業法成立後、おりにふれてJASRACが独占禁止の観点で取り上げられてきたにも関わらず、所管官庁がなぜ今まで手をこまねいてきたのか」
ただ、今回の公取委の立ち入り検査が、これまでの「包括契約」のあり方を見直すきっかけになれば、と考えているようだ。
「60数年にわたって法が認めてきた独占的な市場に割って入るのはそもそも難しい。しかし、デジタル化が進めば、1曲ずつ把握する技術が可能になり、包括契約のあり方も自ずと変わる。そうなれば、新規参入できるという期待は持てるようになるだろう」