東証1部上場の教材出版会社、学習研究社(学研)が、筆頭株主のファンドから社長の解任要求を突きつけられている。理由は「株主として現経営陣を信任できない」というもの。このファンドは、シンガポールに本拠地を置き、「村上ファンド」元社員が立ち上げたという経緯があるだけに「モノ言う株主」が復活したとの見方も出そうだ。
「企業価値が大幅に棄損」として退陣要求
報告書では「株主として現経営陣を信任できない」との主張が展開されている
「解任要求」を突きつけているのは、シンガポールに本拠地を置く「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」。同ファンドは、「村上ファンド」(すでに解散)の運営会社、「MACアセットマネジメント」でファンドマネージャーを務めていた高坂卓志氏らが2006年6月に設立。高坂氏が07年8月にロイター通信に対して語ったところによると、「2億ドル規模の資金を日本の中小型株で運用している」のだという。
同社は07年7月に、学研株の持ち株比率を13.41%として筆頭株主に浮上。08年1月末に18.82%にまで買い増している。
今回の「退任要求」は、同ファンドが08年4月22日、関東財務局に提出した大量保有報告書で明らかになった。大量報告書が提出されるのは、株式の売買がきっかけとなることが多いが、今回の提出理由は「(株式)保有目的の変更」。
同ファンドの学研株の保有目的をめぐっては、07年夏段階では単なる「純投資」とされていたものが、12月の報告書では「純投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案等を行う」と踏み込んだ記載に変更された、という経緯がある。
今回の報告書の「保有目的」の欄には、これまでに明らかになっていた保有目的に加えて、ファンドが学研経営陣に送付した文章の内容が掲載されている。この中で、6月の株主総会で遠藤洋一郎社長の解任を求める方針を明らかにしたのだ。その理由として、(1)07年3月期まで10期連続で減収(連結) (2)4期連続の営業減益 (3)遠藤社長が取締役の就任した98年3月期以降、累積当期純損益が538億円の赤字に達している (4)この間、純資産は902億円から330億円にまで減少した、といった不振ぶりを指摘し「企業価値が大幅に棄損している」と主張。このような状況に対して同社に対して説明を求めたが、4ヶ月間にわたって何の回答もなかったため、今回の解任要求に至った、などと説明している。一方、抜本的な改善策が明らかにされた場合は、解任提案を取り下げる、としている。
「モノ言う株主」としての活動が活発化?
前出のロイター通信の記事によると、同ファンドは「村上ファンドのように世間の注目を浴びるような企業への働きかけは避ける方針」だとされていたが、この方針が転換され「モノ言う株主」としての活動が活発化するとの観測も広がりそうだ。
一方、渦中にある学研の遠藤社長は、07年8月の日経金融新聞(休刊)のインタビューで、同ファンドが筆頭株主になった感想を聞かれて
「何だろな。何が目的なのか、どうしようとしているのか、よくわからない」
と述べた上で、「(買い増しの)警戒水準」については、20%以上の株主に対しては買収防衛策を発動できることを念頭に
「20%を買う意志が示されなければするべきことはない。格好をつける訳ではないが向こうは(編注: インタビュー時点では)純投資と言っている」
と、「20%超え」がない限り静観する考えを示している。
学研の広報・IR室によると、現在は報告書の内容を精査している段階だといい、4月23日夕方、「(ファンドの)会社法に基づく株主提案権の行使の資格などにつき確認中」とのコメントを発表した。
もっとも、市場はこの「解任要求」を静観する構えのようで、4月23日の終値は前日比3円高の255円だった。