東京都が400億円の追加出資を決めた新銀行東京が採用しているスコアリングモデルを使った融資手法をめぐって、金融庁がその手法を地域金融機関の「推奨項目」からはずしたことが波紋を呼んでいる。国際通貨研究所の経済調査部長でチーフエコノミストの竹中正治氏は「そもそも日本では『スコアリング方式の融資モデル』の本質が、まったく勘違いされているのではないか」と、2008年4月10日のNBonline(日経ビジネスオンライン)で指摘、疑問を投げかけた。
どこの金融機関でもふつうに使っている
波紋を呼んでいる新銀行東京(写真は新宿支店)
スコアリングモデルとは、企業の信用力をコンピュータが自動的に弾き出して「評点」をつけて、融資の可否を審査する融資手法。新銀行東京は、それを積極的に用いて不良債権の山を築いたと批判された。
この融資手法は無担保・無保証型ローンに用いられているが、そもそもは金融庁が中小企業の貸し渋り対策のひとつとして地方銀行や信用金庫などに導入を勧めた経緯がある。ところが、新銀行東京の失敗を受けて金融庁はこのほど、推奨をやめてしまった。
竹中正治氏は金融庁の、この対応に首を傾げる。いまの中小企業向け融資には、商業銀行と商工ローンや消費者金融とのちょうど中間層にあたるミドル・マーケットの育成が必要で、効率のよいスコアリングモデルこそ融資手法にマッチしているからだ。
「悪者」扱いのスコアリングモデル
竹中氏は「新銀行東京の誤りはスコアリングモデルの運用方法にあったのに、手法そのものを『悪者』にした。それでは銀行は従前の、コストのかかる融資手法に逆戻りしてしまう」と危惧する。
また、経済評論家の山崎養世氏も同じ意見で、「スコアリングモデルは1件あたりの融資金額が少なく、融資の質が規格化できて、大数の法則が成り立つ場合に有効だ。新銀行東京は、こうした条件のどれをも満たしていなかった」という。新銀行東京が追加出資を招いた根本的な原因は審査能力の欠如と、それを黙殺した怠慢経営にあるとしている。
新銀行東京は融資残高を伸ばしたいあまり、リスクに見合った金利をとっておらず、なかには情実融資もあったとされる。銀行などは激しい貸し出し競争を繰り広げ、融資を伸ばそうとしているが、さすがにコンピュータの「評価」に漏れた企業にまで資金を用立てたりはしないし、そもそも「スコアリングモデル」を使ったために経営危機に陥った銀行などない。