日本の調査捕鯨団に対する妨害活動が問題化した米環境保護団体「シー・シェパード」が、今度はカナダ政府と対決姿勢を強めている。カナダの沿岸警備隊が、アザラシ猟を監視していた同団体の船を拿捕(だほ)、乗組員2名を逮捕したもので、カナダの閣僚は「シー・シェパードの唯一の狙いは、資金提供者からカネをむしりとること」と非難。一方で、シー・シェパード側は「(拿捕は)戦争行為」などと猛反発している。
カナダの漁業海洋省は2008年4月12日、シー・シェパードが所有するオランダ船籍の船舶「ファーレイ・モワット号」を拿捕し、乗組員2名を逮捕した、と発表した。
「カネをたかる、ずるい連中が沢山いる」
「シー・シェパード」監視船が狩猟現場に接近する様子をとらえた写真
(カナダ漁業海洋省(Fisheries and Oceans Canada)ウェブサイトより)
カナダでは3月28日に08年シーズンのアザラシ猟が解禁され、タテゴトアザラシについては、27万5000頭を上限に捕獲できる。シー・シェパードはアザラシ猟に反対しており、同船が監視活動を続けてきた。拿捕当時の状況について同省は、監視船は猟の現場近く900メートルまで接近して狩猟者の安全をおびやかしたほか、カナダの領海から出るように再三求められたにもかかわらず、従わなかったと発表している。
ハーン漁業海洋相は、
「船の前進を許して、もし誰かが撃たれたり死んだりしたら、誰が責任をとるのか」
と、今回の措置は狩猟者の安全のためであることを強調。一方、シー・シェパード側については、
「カネをたかる、ずるい連中が沢山いる。彼らの唯一の目的は、本当は何が起きているか知らない人々のポケットから、出来るだけ多くのカネをむしり取ることだ」
とこき下ろした。
監視活動は猟に危害与えない?
これに、シー・シェパード側は当然のように猛反発。今回のカナダ政府の措置を「戦争行為」と非難した上で、
「カナダ政府は、公海上でオランダ船籍の船に武装部隊を送り込み、拿捕した」
と主張し、カナダ政府側の主張と食い違っている。さらに、
「シー・シェパード乗組員は、(猟の様子を記録するための)カメラでしか武装していない。狩猟者に対する唯一の危険は、カナダ政府によるものなのではないか」
と、監視活動は狩猟者に危害を与えるものではないことを強調した。
もっとも、カナダ国内では、シー・シェパードを支持する声は多くないようだ。カナダの通信社「カナダ通信(CP)」は、監視船が現在係留されている都市の住民の声を、このように伝えている。
「シー・シェパードは、人々を危険に陥れる以外のことは、あまりやっていない」
「自分達のことを、自分で『お邪魔虫』にしている」
拘束されていた乗組員2名は、4月13日、それぞれ5000ドルの保釈金で保釈され、公判が5月1日に始まる。裁判の結果によっては、最大で10万ドルの罰金または最長1年の懲役、あるいはその両方が課せられる可能性がある。