ローソンの子会社が「稲庭うどん」として販売中の100円ショップ商品に、秋田県の地元協同組合が反発している。「ブランドの品質通りでなく、イメージ低下になる」というのだ。ローソンは、「味は落ちていない」と反論している。「稲庭うどん」は商標登録されておらず、話し合いのめどは立っていない。
ローソン反論「味は落ちていない」
秋田県稲庭うどん協同組合のサイト
渦中の100円ショップ商品は、「稲庭平打饂飩(うどん)」。ローソン子会社のバリューローソンが2006年5月から、首都圏中心に72店ある「ローソンストア100」で販売している。「稲庭うどん」は、秋田県湯沢市稲庭町を中心に300年前から製造されているとされ、高級志向で知られる。01年10月に設立され、地元の19社でつくる「秋田県稲庭うどん協同組合」によると、手作りで時間をかけて生産され、つるつるとした滑らかなのどごしが特徴だという。
「稲庭平打饂飩」は地元で売られていないため、同組合が知ったのは、たまたま試食の機会があってから。組合の佐藤信光専務理事は、「食べたときに、のどが詰まる感じでした。めんは、我々のより幅が広く薄かった。こういうのが出て、すごく残念です。抗議するかどうか、対応は協議して決めたい」と話す。
組合の「稲庭うどん」は、180~200グラム300~500円。佐藤専務理事は、「商品力を保つのに、製造コストがかかっています。それなのに、150グラム100円とは。しかも、『伝統製法』と書いてあります。これでは、ブランド低下につながります」と嘆く。
これに対し、ローソンの広報担当者は、「組合から今まで何の話もなかったのに、突然のことで非常に困惑しています」と話す。製造を委託したのは、組合未加入なものの、それまで12年間稲庭うどんを製造していた稲庭町のメーカーだという。
150グラム100円という価格については、「小分けして小容量の食べ切りサイズで販売しています。味が落ちたとか、稲庭うどんでないとは考えていません」と主張。「ブランドイメージを傷つけたという認識もない」として、今後も販売を続けると断言した。
「稲庭うどん」で申請したが、なかなか許可が出ない
こうした行き違いが生じた背景には、「稲庭うどん」が商標登録されていないこともある。その使用が縛られないため、どんな業者が「稲庭うどん」と主張してもおかしくないからだ。
稲庭うどん協同組合のホームページを見ると、「四国の讃岐うどん、名古屋のきしめんとともに日本三銘うどんの一つ」とある。讃岐うどん、きしめんも商標登録されていないが、同じような問題が出ているのだろうか。
香川県のさぬきうどん協同組合の大峯茂樹理事長は、「コンビニなどの大手企業では、模造品のケースは聞いたことがありませんね。しかし、怒ってもきりがないのですが、東京で勝手にブランドを使われているのではないかとの危機感はあります」と話す。
同組合では、ブランドを守ろうと、06年4月から始まった地域団体商標制度を前に、「讃岐うどん」「さぬきうどん」「サヌキうどん」で特許庁に登録を申請しようとした。が、普通名称に近いなどと、難色を示されたという。
名古屋のきしめんはどうか。同市製麺協同組合では、「今のところは聞いていませんが、粗悪品がある可能性はありますね。『きしめん』では難しいので、『名古屋名物きしめん』などで地域団体商標に申請しました。どうなるのかと気になっています」と話す。
稲庭うどん協同組合でも、ブランドを守ろうと、06年8月に地域団体商標名「稲庭うどん」で申請したが、なかなか許可が出ず、07年10月に取り下げた。しかし、同じ名かどうか決まっていないものの、08年度中に再申請するという。組合の佐藤専務理事は、「類似品がずいぶん出回っており、法的根拠がなくても、なんとか対応しないといけない」と危機感を募らす。
コンビニ業界も、伝統食品との関係づくりに四苦八苦しているようだ。香川県農業生産流通課では、「大手コンビニ3社から、讃岐うどん商品の販売を検討しているという話を聞きました。賞味期限の関係があるので今まではコンビニの商品がありませんでしたが、差別化を図ろうと、各社とも高級志向のものを狙っているのでしょうね」と話した。