高級ブランドの「大衆化」の勢いが止まらない。庶民にとって高嶺の花であったのは一昔前のこと。「シャネル」はテレビや新聞に広告を掲載し、「ルイ・ヴィトン」と「ティファニー」は公式サイトでネットショップを開設している。「グッチ」にいたっては高級ブランドでは珍しいモバイルサイトをオープンした。一方で「これまで守られてきた老舗ブランドらしさがなくなるのではないか」と懸念する声も上がっている。
「ヴィトン」は通販に積極的
2008年3月28日にイタリアのファッションブランド「グッチ」で初めてのモバイルサイトがオープンした。女性向けのハンドバッグシリーズ「ジョイ コレクション」の春夏新製品のプロモーションの一環で、氏名などを登録すると待ち受け画面や携帯電話のメニュー類をカスタマイズできる「きせかえツール」が無料でダウンロード可能だ。
高級ブランドがモバイルサイトを開設する例は珍しい。重厚な雰囲気の店内で対面式のサービスを実施する高級ブランドにとって、誰もが手軽に利用できるモバイルは正反対に位置している。
「大衆化路線に変更したのか」というJ-CASTニュースの取材に対し、グッチ グループ ジャパンは「ノーコメント」と回答した。
フランスの老舗ブランド「ルイ・ヴィトン」も積極的にネットを活用している。日本公式サイトでは、オンラインショップ「E-ショッピング」が07年5月から開設されている。定番の「モノグラム」のほか、最新コレクションのバッグ、財布、腕時計、携帯ストラップなどを豊富に揃える。
ルイ・ヴィトン ジャパン カンパニーの広報担当者は、
「ネット通販を始めたことで、ブランドイメージを損ねるとは思っていない。サービスの一環として認識している」
と説明する。
将来お客になってくれればいい
高級ブランドがネットを活用し始めたことについて、日本通信販売協会の担当者に話を聞いた。
「ネットでの通販や情報発信によって、ブランドへの間口を広げている。若者を取り込み、未来の顧客として育てる作戦だ」
今すぐ購入してもらえなくても、親しみをもってもらい、潜在的顧客を増やす、という作戦らしい。
アメリカでは宝飾店「ティファニー」が、子供用のジュエリーからハイジュエリーまで幅広い値段の商品を販売し、幼少期から顧客を取り込むことに成功している。
この傾向はアメリカで数年前から進んでいるというが、日本ではまだ始まったばかり。潜在顧客にまでアプローチしようというのだから、ブランドの大衆化は今後ますます進みそうだ。