携帯電話最大手、NTTドコモの国内シェアが11年ぶりに5割を割り込んだことが明らかになった。新規参入が相次ぎ、各社が多様な料金プランを展開していることなどが「王者」ドコモの外堀を埋めている形だ。一方のドコモは、「特にコメントはない」と静観の構えだが、抜本的な挽回策は打ち出せずにいる。
「905iシリーズ」もそれほどインパクトなかった
「905iシリーズ」は好調だったが…
電気通信事業者連合会(TCA)が2008年4月7日発表した07年度の携帯電話契約数(PHSを含む)によると、ドコモの08年3月末の純増数は17万3700件で、累計契約数は5338万7700万件。国内の携帯・PHSの合計契約数は1億733万9800件なので、同社が08年1月のPHS事業から撤退したこともあり、シェアは49.7%(06年度末は52.2%)と、半分を割り込むことになった。シェア50%割れは96年以来、11年ぶり。
ドコモについては、07年12月の段階では、J-CASTニュースでも「『905i』6割増の絶好調 ドコモ『一人負け』脱出確実」という記事で伝えたように、07年11月下旬に投入した「905iシリーズ」が3週間弱で100万台を売り上げるなど絶好調だったが、1年をとおしての業績には、十分に効果が現れなかった模様だ。
一方、他社の07年度末のシェアを見てみると、2位のKDDI(auブランドとツーカーブランド)は29.5%(前年度比0.4ポイント増)、3位のソフトバンクモバイルは18.1%(同1.8ポイント増)と、各社とも追い上げを強めている。また、07年3月に新規参入したばかりのイー・モバイルは0.4%だった。
追い上げる側の2社だが、ソフトバンクモバイルは、「無料化」での先行が目立つ。07年1月に導入した昼間に自社端末間で無料通話できるプラン「ホワイトプラン」を皮切りに、家族間通話を無料にしたり、08年には学生向けの基本料無料プラン「ホワイト学割」を導入したりするなど、矢継ぎ早に値下げ策を打ち出した。その結果、同社の3月の純増数は54万3900件で、11か月連続で月間純増数で首位の座を守った。
KDDIは、08年3月には家族間通話無料サービスに踏み切るなどして、純増数は50万500件。ソフトバンクモバイルと競り合う形だ。
「インフラ面では一番しっかりしているはずなのに」
こうしてみていくと、ドコモは純増数の面では「一人負け」で、その結果シェアの面では「外堀を埋められている」形だ。その一方で、専門家からは「これまでの『1社が50%のシェアを持っている』という状況がおかしかった」と、比較的冷淡な声も聞こえてくる。「電話代、払いすぎていませんか? 10年後が見えるケータイ進化論 」(アスキー新書)などの著書がある携帯電話専門家の木暮祐一さんは、
「90年代以降、ケータイの契約数は右肩上がりですが、現在は1人当たり1~2台の端末を持つという、いわば市場が成熟した状態です。各社が限られたユーザーを奪い合う形なので、現時点で最大のシェアを持っているドコモが、もっとも狙われやすいのでしょう」
と話す。具体的なドコモの敗因については、端末のラインアップを指摘する。
「ソフトバンクは、それぞれ『テレビを見るための端末』『写真を撮るための端末』といったように、端末別にコンセプトが出ているのですが、ドコモの場合は『どれを選んでも、一通りの機能が付いている』という具合で、イマイチ端末別の特徴を出し切れていないように思います」
ドコモ側に挽回策はあるのか。NTTドコモに聞いてみると、契約数の発表については
「特にコメントすることはありません」
としながらも、
「4月1日には、家族への国内通話を24時間無料にする料金プランを始めますので、まずはこれを全面的に訴求していきます。それとともに、既存のお客様の囲い込みにも注力する予定です」と、無料プランの展開を強調するが、「ソフトバンクの二番煎じ」との指摘は免れなさそうな状況だ。
もっとも、前出の木暮さんは、「別に私はドコモがダメだと言っている訳ではありません」と、ドコモを擁護してもいる。
「ケータイ業界では、サービスばかりが重視されがちですが、本当はネットワークの品質といったインフラ面が一番重要なはずです。この点ではドコモが一番しっかりしているはずなのに、十分にこの点を訴求し切れていないのではないでしょうか」