「インフラ面では一番しっかりしているはずなのに」
こうしてみていくと、ドコモは純増数の面では「一人負け」で、その結果シェアの面では「外堀を埋められている」形だ。その一方で、専門家からは「これまでの『1社が50%のシェアを持っている』という状況がおかしかった」と、比較的冷淡な声も聞こえてくる。「電話代、払いすぎていませんか? 10年後が見えるケータイ進化論 」(アスキー新書)などの著書がある携帯電話専門家の木暮祐一さんは、
「90年代以降、ケータイの契約数は右肩上がりですが、現在は1人当たり1~2台の端末を持つという、いわば市場が成熟した状態です。各社が限られたユーザーを奪い合う形なので、現時点で最大のシェアを持っているドコモが、もっとも狙われやすいのでしょう」
と話す。具体的なドコモの敗因については、端末のラインアップを指摘する。
「ソフトバンクは、それぞれ『テレビを見るための端末』『写真を撮るための端末』といったように、端末別にコンセプトが出ているのですが、ドコモの場合は『どれを選んでも、一通りの機能が付いている』という具合で、イマイチ端末別の特徴を出し切れていないように思います」
ドコモ側に挽回策はあるのか。NTTドコモに聞いてみると、契約数の発表については
「特にコメントすることはありません」
としながらも、
「4月1日には、家族への国内通話を24時間無料にする料金プランを始めますので、まずはこれを全面的に訴求していきます。それとともに、既存のお客様の囲い込みにも注力する予定です」と、無料プランの展開を強調するが、「ソフトバンクの二番煎じ」との指摘は免れなさそうな状況だ。
もっとも、前出の木暮さんは、「別に私はドコモがダメだと言っている訳ではありません」と、ドコモを擁護してもいる。
「ケータイ業界では、サービスばかりが重視されがちですが、本当はネットワークの品質といったインフラ面が一番重要なはずです。この点ではドコモが一番しっかりしているはずなのに、十分にこの点を訴求し切れていないのではないでしょうか」