サンフランシスコで行われた北京五輪聖火リレーのコースが突然変更されたことなどを受けて、日本でのリレー開催についても緊迫ムードが漂っている。長野では少なくとも4団体がチベット問題に関連した抗議行動を予定しており、日本オリンピック委員会(JOC)の会長も「危害が与えられるような状況なら(対応を)考えないといけない」と発言するが、長野市の実行委員会は「まだ何も聞かされていない」と困惑気味だ。
「国境なき記者団」がギリシャやパリで妨害活動
「国境なき記者団」では、トップページで五輪への抗議を呼びかけている
米サンフランシスコで2008年4月9日(日本時間では10日早朝)行われた聖火リレーは、当初予定されていた10キロのルートを大幅に変更・短縮される形で行われた。混乱を恐れての「苦肉の策」だったが、これが4月26日に予定されている長野でのリレーにも波及しそうなのだ。リレー当日には、すでに4団体が抗議活動などを行うことを明らかにしている。さらに、共同通信が4月11日に伝えたところによると、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が、同社に対して
「東京に我々の事務所があり、もちろん長野でも(抗議行動を)何かやるつもりだ」
と明言。「記者団」をめぐっては、3月24日にギリシャで行われた聖火採火式にメンバー2人が「乱入」したほか、4月7日にもパリで妨害活動を展開してもいる。
同団体ウェブサイトのトップページには、オリンピックのシンボルマークをもじった、手錠を重ねた写真が大きく掲載され、「中国は、ジャーナリストとネットで活動する反体制派にとって、世界最大の監獄だ」というスローガンが掲載されている。「手錠マーク」が入ったTシャツも1枚30ドルで販売されており、「反五輪」キャンペーンへの参加を呼びかけている。その一方で、今後の具体的な抗議行動の計画については明らかにされていない。「記者団」の東京オフィスにもコンタクトを試みたが、不在の様子で、長野での抗議計画については不明なままだ。
「IOCや五輪の実行委員会から何の指示も来ていない」
一方、聖火リレーを担当する長野市の事務局では、
「(サンフランシスコのリレーの後も)まだ当方にIOCや五輪の実行委員会から何の指示も来ていないので、現状の計画を実行していきます」
と、「粛々と準備を進める」という立場だ。
4月10日に、日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が、長野でのリレーについて
「できるだけ計画通りやって欲しい。だが、危害が与えられるような状況なら(対応を)考えないといけない」
と、実施計画の変更を示唆したことについては、
「当方では発言の真意がわかりませんし、まだ具体的な話は聞いていません」
と困惑気味だった。
また、各国のリレーでは、青いスポーツウェアを着てランナーに伴走し、不審者を取り押さえるなどしている中国側の「聖火警備隊」が話題になっているが、泉信也国家公安委員長は4月11日の会見で
「他国で走られたから日本でも走るという考え方は歓迎できない」
と述べており、「青い軍団」が長野に登場する可能性が低くなっている、というのが現在の情勢だ。