地方自治体が地域の住民を対象に発行する住民参加型の市場公募地方債、いわゆる「ミニ公募債」が売れない。個人向け国債の売れ行きが好調だったり、企業が個人向け社債の発行を増やしたりと、株安で嫌気がさした資金が債券市場に流れ込んでいるにもかかわらず、売れ残るケースもあるという。兵庫県など、一部の自治体では2008年度の発行額を抑える計画のようで、「発行が増えて飽きられた」との見方もある。
発売当初は「即日完売」の人気だった
ミニ公募債は2002年3月に、群馬県が初めて発行した地方債。1回の発行で100億円程度を資金調達する一般の地方債と異なり、発行額は小さいが、都道府県以外にも各市町村でも機動的に発行できる。引き受けるのは地元住民で、そのため購入単位も1万円から買える。調達資金を病院や学校、道路といった生活インフラに使うことにしているので、「地域住民の社会貢献意欲を高める」狙いもあった。
流通性に乏しいなどのデメリットもあるが、地域の銀行や信用金庫、証券会社などで買うことができ、発売当初は銀行預金を上回る金利の魅力もあって、発売初日に完売するほどの人気だった。
ところが、そんなミニ公募債に陰りが出てきた。総務省と地方債協会によると、07年度の発行額は約3075億円で、06年度より12.5%減った。発行開始以来、初めての減少だ。 千葉県や新潟県、富山県、鳥取県では売れ残りも出た。原因は、金利上昇によって個人投資家が金利に敏感になったことや、投資商品の広がりとともに商品を選ぶようになったためとされる。
兵庫県は07年比20%カット
自治体側の情報開示が甘かったり、個人向け国債のほうが説明しやすく売りやすかったりしたこともあって、販売する金融機関側の力の入れ具合が緩んできたことも 影響している。
兵庫県は2008年度に発行を予定しているミニ公募債の総額を、07年度の250億円から200億円に減らす。売れ行きが鈍ったのは「金利の低下で他の金融商品との競争力の点で見劣ることが考えられる」(財政課)とし、「(発行額は)しばらくこの程度になると思う」としている。
ある自治体の関係者は、「金利は関係ない」と話す。たとえば07年夏のサブプライム問題の発覚以降、確実な投資対象として国債に資金が集まった。地方債の金利は国債にほぼ連動するので、「金利が下がって売れないのであれば、個人向け国債なんかも、たくさん売れ残っていいはず」というのだ。
その関係者は「新しい金融商品が続々登場して、ミニ公募債はすでに飽きられている」という。ミニ公募債の特徴のひとつに資金使途が明確になっていることあるが、最近発行されたなかには「借換債」も含まれるようになった。