パリでは4度も火が消されるなど妨害続きの北京五輪聖火リレー。日本でその舞台となる長野市では、今のところ大きなデモなどの動きは見られない。ただ、ランナー側から不安の声も聞かれるほか、ネットでは、強いアピール行動を促す書き込みもみられ、県警などが警戒を強めている。
長野県民有志らが抗議の横断幕を計画
日本での聖火リレーは、2008年4月26日に長野市内で予定されている。観光名所の善光寺をスタートし、長野五輪で使われた競技施設などを巡りながら若里公園へゴールする18.5キロのコース。80人のランナーが1人200~300メートル走って、聖火をつなぐ。新聞各紙によると、ランナーには、一般市民のほかに、野球日本代表の星野仙一監督、タレントの萩本欽一さん、卓球日本代表の福原愛選手ら著名人が参加する見込みだという。
地元の信濃毎日新聞などを見ると、リレー当日は、大きなデモや集会などは今のところ、表面化していない。報道されているのは、抗議の横断幕を掲げるという動きだ。これは、チベットの人権侵害をなくすため4月1日に長野県民有志らで結成した「チベット問題を考える長野の会」。代表の野池元基さん(49)によると、当日は、スタート地点など3か所でそれぞれメンバー4、5人が「チベットに自由を、チベットに人権を」と書いた横断幕を掲げるという。「大勢の人に呼びかけるデモとか集会とかではなく、静かなアピール活動です。リレーの妨害をせず、非暴力で合法的な形でやると当初から決めています」と野池さん。
前日25日の夜には、長野市内のホールで名古屋市在住のチベット人、ツェリン・ドルジェさん(34)を招いて100人前後で集会を開く予定。ツェリンさんは、米国ニューヨークに本部がある「チベットに自由を求める学生の会」の日本代表をしている。
いずれもこれから県警に許可を求めるが、各国で聖火リレーが混乱しているだけに、野池さんは「県警は、4、5人なら問題ないとの反応でしたが、本音ではやってほしくないようでした」と漏らす。
ネットでは、激しい行動示唆する書き込みも
ネットでも、2ちゃんねるには、「聖火リレーでチベットを応援しよう」というスレッドがいくつか立ち、合法的に中国のチベット迫害などを批判する自己表現をリレー当日にしようという呼び掛けが始まった。そこでは、スタート地点などで、「チベット国旗」を振ったり、「フリーチベット」と叫んだりしてもいいなどと書き込まれている。聖火リレーの長野市実行委員会に電話でその合法性を確認したとして、「拡声器を使ったりすると逮捕などできないが現場から離れるよう指導するそうです。聖火リレーを直接妨害すると逮捕だそうです」などと説明している。
ただ、「激しく抵抗活動を行いたい人は派生スレに行くか、別スレを立てること」とある。そして、別に立てられたスレッドには、単独行動、自己責任が基本だとしながらも、「犯罪はダメだが、ロンドンを見ていれば ある程度激しい行動やアピールが報道につながるのは事実 『黙ってチベットの旗だけ掲げる日本人の民度を見せてやろうぜ!』 とかではなく、とにかくチベットを応援するというスタイルの人に」との書き込みがあった。
こうした動きについて、長野県警の広報課では、J-CASTニュースの取材に対し、「警備の体制などは答えられない」としながらも、情勢を見ながら、他の都道府県警の応援を求める方向で検討していることを明らかにした。
実行委事務局の長野市教委体育課では、「海外からも取材が殺到しています。警備については、警察にお願いして万全の体制を組んでもらっています」と話す。ただ、各国で取り組まれている沿道フェンスについては、「もともと計画になかったですし、必要がないと考えています。パリとかロンドンであったことは、日本ではないと思われます」とした。
また、リレー3日前の4月23日には記者会見で、予定通り、ランナーがどの区間を走るか一部については発表したいとしている。「有名な方も出られるので、それを教えないわけにはいきません」と同課。
一方、ランナー側からは不安の声も聞かれる。福原愛選手のマネジメントをしている千秀企画では、「聖火リレーに出るかどうかは決定しておらず、検討している段階です。もし出るならば、(妨害などの)対策をお願いしないといけないと考えています」と話している。