検査にクレーム、居留守… 「気にくわない」から医療費不払い

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   「気にくわないから払わない」。こんな理不尽な理由から医療費の支払いを拒否するケースが、全国の病院で相次いでいる。研究者の調べでは、都内の病院で06年度には、こうした拒否は727件に上ったという。病院側は、弁護士を使ったりしながら、対策に頭を悩ませている。

医療費払っていないのに、平然と診察に来る

「救急施設を持っている病院は、集金がかなり大変だと聞いています。いつも来ている患者より、初めて来る救急患者の方が、不払いが多いようですから」

   東京都の病院関係者は、J-CASTニュースの取材に対し、こう答えた。

   不払いのケースとしては、督促しても払わないため、自宅まで徴収に向かうと、居留守を使われることが多いという。また、検査しても何も異常がなかった場合、「不必要な検査をした」と逆ギレし、検査費を払わないケースがあると話す。

   さらに、「前回の医療費を払っていないのに、平然とまた診察に来る患者がいます」とこの関係者。この場合でも、応召義務の規定が医師法にあるため、診察を断れないという。

「民間企業なら、『料金を払っていない』と断れるのですが、そこがつらいところです。医療費は数万~数十万円と額があまり大きくならないので、訴訟経済に合いません。小額訴訟の制度はありますが、事務的に大変です」(前出の病院関係者)

   そんな窮状になっている医療費問題。東京都福祉保健局の西塚至氏が都病院学会で発表した研究結果によると、都内の約200病院のうち2006年度に確認された「苦情に伴う医療費の支払い拒否」は、123病院727件に達したことが分かった。都内だけでも、故意の不払いがかなりの数に上ることになる。

   確かに、不払いには、かつて1割だった自己負担が03年に3割へ増えたことや、格差社会で生活に困る人が相当数出ていることも背景にあるとされる。しかし、J-CASTニュースが07年11月14日付記事で報じたように、大阪府堺市の私立病院で退院を拒否して暴言を吐いたうえ185万円を納めなかったケースなど、患者のモラル低下を指摘する向きも多い。

取り立てに、債権回収業者を起用する病院も増える

   理不尽な不払いに対して、厚生労働省では2007年6月、未収金問題に関する検討会をスタートさせ、対策を練っている。一方で、独自に自己防衛策を打ち出す病院が増えてきた。

   例えば、不払いの多い救急施設を持つ北海道の各道立病院は、07年4月から、夜間、休日の外来診療を受けた患者に対し、診療直後に一定額を支払う「預かり金制度」を導入している。差額は、平日の日中に来院した際に清算する。医療費の不払いが累積赤字の一因になっているためだ。

   一律5000円を徴収している道立紋別病院の庶務課では、「それでも、『持ち合わせがない』と、支払わない患者がいます。中には、『後日に払いたい』と繰り延べし、その後連絡がつかないケースもありますね」と明かす。「払えない患者は、生活が苦しい人がほとんど。しかし、夜間に複数回来ていつも治療費を入れない患者がおり、そういう人は故意でしょうね」とも話した。

   不払いの医療費取り立てに、債権回収業者を起用する病院も増えている。一方、東京医科歯科大医学部附属病院では、07年5月から、弁護士に回収業務を委託している。

「患者との信頼関係がありますので、イメージの悪い債権回収業者には抵抗を感じました。弁護士なら、個人情報を調べる資格がありますので、不払い患者の住所が確認できます」(医事課長)。

   同病院によると、故意とみられる不払いがみられ、「月をまたがった支払いは、高額医療費の対象にならない。それなのに、理由を説明していない」とクレームをつけて支払いを拒否した患者などの例があった。医事課長は、「不払いの患者に督促の手紙を出しても返送されてきたり、電話をかけても留守番電話、使われていない電話だったりすることがよくあります。そんな人の住所は、警察に確認しても教えてくれないので、弁護士に頼むことにしました」と話す。

   医師不足による救急患者のたらい回しなどに見られる病院経営の混迷。さらに「モンスター・ペイシェント」の存在が、それに拍車をかけているようだ。

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