取り立てに、債権回収業者を起用する病院も増える
理不尽な不払いに対して、厚生労働省では2007年6月、未収金問題に関する検討会をスタートさせ、対策を練っている。一方で、独自に自己防衛策を打ち出す病院が増えてきた。
例えば、不払いの多い救急施設を持つ北海道の各道立病院は、07年4月から、夜間、休日の外来診療を受けた患者に対し、診療直後に一定額を支払う「預かり金制度」を導入している。差額は、平日の日中に来院した際に清算する。医療費の不払いが累積赤字の一因になっているためだ。
一律5000円を徴収している道立紋別病院の庶務課では、「それでも、『持ち合わせがない』と、支払わない患者がいます。中には、『後日に払いたい』と繰り延べし、その後連絡がつかないケースもありますね」と明かす。「払えない患者は、生活が苦しい人がほとんど。しかし、夜間に複数回来ていつも治療費を入れない患者がおり、そういう人は故意でしょうね」とも話した。
不払いの医療費取り立てに、債権回収業者を起用する病院も増えている。一方、東京医科歯科大医学部附属病院では、07年5月から、弁護士に回収業務を委託している。
「患者との信頼関係がありますので、イメージの悪い債権回収業者には抵抗を感じました。弁護士なら、個人情報を調べる資格がありますので、不払い患者の住所が確認できます」(医事課長)。
同病院によると、故意とみられる不払いがみられ、「月をまたがった支払いは、高額医療費の対象にならない。それなのに、理由を説明していない」とクレームをつけて支払いを拒否した患者などの例があった。医事課長は、「不払いの患者に督促の手紙を出しても返送されてきたり、電話をかけても留守番電話、使われていない電話だったりすることがよくあります。そんな人の住所は、警察に確認しても教えてくれないので、弁護士に頼むことにしました」と話す。
医師不足による救急患者のたらい回しなどに見られる病院経営の混迷。さらに「モンスター・ペイシェント」の存在が、それに拍車をかけているようだ。