ガソリン携行缶が売り上げを伸ばすなど、ホームセンターの一部でガソリン「買いだめ」準備ともみられる現象が現れ始めている。安いガソリンの品切れやガソリン税の暫定税率が復活する場合に備えての購入らしい。ただ、携行缶はセルフスタンドでは不可、灯油用ポリタンク使用は違法のため、ガソリンスタンドでも対応策に頭を痛めている。
携行缶が売れるホームセンターも
暫定税率復活なら、禁止のポリタンクを持ち込むドライバーも出るのか?
「通常ならそう動く商品ではないんですが…」
北海道帯広市のホームセンター「グッドー白樺店」の担当者は、J-CASTニュースの取材に、こう漏らした。売り上げを伸ばしているのが、ガソリン携行缶。車のガス欠防止や農業機械・船舶用に使われる特殊な金属缶だからだ。
「それまで1週間で3~4缶だったのが、10缶以上売れていますね。3月下旬からそうです。お客さまには若い人もいて、ガソリンの買いだめとしか思えないですね」
同店では、3480円の10リットル缶を、暫定税率が切れた4月1日に完売。売り上げ増を見込んで、今後、売り場面積を2.5倍にするという。
ガソリン税の暫定税率分の1リットル25円が下がり、値下げしたガソリンスタンドの中には品切れも報道されている。また、福田康夫首相は4月下旬に暫定税率を復活させる方針を示しており、これらに備えて家で備蓄しようとするドライバーがいるのではというわけだ。
現在は、こうした現象は、一部に留まっている。大手ホームセンター「コーナン」(大阪府堺市)では、「携行缶の売れ行きに、目立った変化はありませんね。あまり安いものではないですし」と話す。いくつかのガソリンスタンドに聞いても、携行缶などを持ち込むケースは確認されなかった。
とはいえ、「税率が元に戻るなら、そんなドライバーが出てくると思う」(福島県の「会津ゼネラル」)とみる向きは多い。
ポリタンク持ち込みに懸念の声
消防法によると、ガソリンは、40リットル未満なら家庭で買い置きすることができる。
しかし、消防庁危険物保安室では、「給油時に蒸気が漏れれば、服の静電気にも引火する可能性があります。ガソリンは、火災が発生する危険が極めて高いのです。一般家庭は、防火設備が整っていないので、買い置きは極力控えて下さい」と話す。
ガソリンスタンドでは、店員がいれば携行缶で購入できる。が、セルフスタンドでは禁止されている。各スタンドでは、モニターで客の給油状況を確認しているようだが、懸念されるのが、混雑や値上げ前の混乱にまぎれて給油するドライバーが出てくることだ。あるガソリンスタンドでは以前、車への給油後を見計らって携行缶にガソリンを入れるドライバーもいたという。
さらに、恐ろしいのが灯油用のポリタンクにガソリンを入れることだ。これは、大変危険なため消防法で禁止されている。ところが、前出のグッドー白樺店では、不気味なことに、ポリタンクの売り上げも伸びているというのだ。
「暖かくなってきたので売れていなかったのですが、548円の18リットル入りがこの1週間で20缶ぐらい出ています。禁止なのを知らないで買った可能性がありますが、携行缶と違い、エア抜きがなく膨張するので非常に危険です。ポリタンクに注意書きが張ってありますが、今後はさらに張り紙をしたいと思います」(担当者)
スタンドでも、戦々恐々としている。前出の「会津ゼネラル」のSS事業部長は、こう明かした。
「ホームセンターで買わなくても、家にある灯油用のポリタンクを持ってきて入れたりするのでは、と恐れています。ガソリンを入れて火事になった例をけっこう聞いていますので、とても怖いです。誤ってポリタンクに給油したら大変なことになりますので、監視をさらに強め、見つけたら『止めて下さい』と呼び掛けます」