横浜市立大が「謝金騒動」に揺れている。同大学の医学部長(当時)が医学博士の学位を取得した大学院生の医局員から謝礼として現金を受け取るという慣行が問題化したものだ。これを調査する過程で、調査委員会のメンバーの一人が、自らも謝礼金を受け取っていた可能性を指摘されて解任されたほか、医局メンバーからは調査のきっかけになった内部通報者の責任追及を求める「申入書」が提出されたことも明らかになり、極めて異例の事態に発展しているのだ。
文部科学省から「再発防止につながらない」と一蹴
この「謝礼」は、1人あたり30万円が基本で、長年の慣行として続けられていたといい、内部告発をきっかけに07年11月に学内の「コンプライアンス推進委員会」が調査を開始。08年3月12日になって記者会見を開いて内部調査を行っていることを発表し、問題の存在を公に認めた。この問題をめぐって、さらにトラブルが続いているのだ。
例えば、会見翌日の3月13日には、事実関係と再発防止策をまとめた文書を文部科学省に提出したが、文書で示された再発防止に向けてのスケジュールがあいまいだったため「再発防止につながらない」と一蹴されている。
さらに、委員会メンバーのひとりに、学部長と同様に医局員から謝礼金を受け取っていた疑惑が浮上。同大は、3月18日に
「報告の公正性を高めていくため」
などとして、このメンバーを解任している。
3月25日には委員会が報告書を発表。「謝礼が一部存在していた」としたものの、「謝礼の有無が学位審査に影響した可能性はない」とした。その上、謝礼の総額や人数については「任務ではない」として調査は行われなかった。もっとも、金銭のやりとり自体については「明らかに倫理違反」と非難している。
ところが、このような不十分と言われても仕方がない内容の調査に対しても、批判の声が上がっているようなのだ。教室の医局員が、問題発覚のきっかけとなった内部告発者の責任追及を求める文書を大学側に提出したのだ。
医局に所属する准教授や講師11人が署名
文書は、問題が公表されるよりも1か月以上前の2月12日付けで、医局に所属する准教授や講師11人が署名。理事長と学長に宛てて提出された。文書では
「医局に在籍するものが、医局内の出来事を悪意によって歪曲し伝えなければ作り上げられない内容」
「一緒に研究してきた仲間を犯罪者に引きずり降ろそうとする人間と職場をともにすることに恐怖感と強い嫌悪感を抱く」
などと内部告発者を非難しており、大学側には
「(内部告発者に対する)厳しい責任の追及と猛省をお願いしたい」
と求めている。
いわゆる内部通報制度では、内部告発者を保護することが求められるのが一般的で、内部告発者の責任追及を求めるような動きは異例。
大学側も、J-CASTニュースに対して
「このような申し入れに個別に対応することは、(内部告発者を保護するという)制度の趣旨にそぐわないので、個別の対応は控えています。一般論として、全体的に問題があるということであれば今後対応します」
と話しており、今回の申し入れには対して具体的な対応は行わないことを明らかにしている。医局メンバーに対しても、2月20日付けで「個別具体的な対応は行わない」旨を文書で回答したという。