「現地収穫」に励もうという矢先に生産調整
ところが日本車メーカーは1990年代後半から2000年代前半にかけて利益率が高いライトトラック系の現地生産に相次いで乗り出しており、収穫に励もうという矢先。せっかく新設した工場がフル活用できないジレンマに陥っているのだ。トヨタのインディアナとテキサス、ホンダのアラバマ、日産のキャントンといった新しい工場は投資を回収するためにどんどんライトトラックを生産したいところだが能力を発揮する場面にない。
乗用車の需要増には日本の工場から輸出すれば事足りる。しかし1ドル100円を切る円高ドル安では喜んで輸出するほど採算は甘くない。
中国、ロシア、インドなどの新興国は急激なモータリゼーションを迎えており、すでに日本車メーカーに恩恵を与え、あるいは非常に楽しみな存在になっている。しかし、米国ほどメーカーの活動の基盤が揃い、自由に事業が展開できる大市場はない。しかも、先進国で唯一、人口が伸びている国でもある。米国市場の不振がどの程度の期間続くかは日本車メーカーの経営に与える影響が大きい。新興国はまだ発展途上で政治的なリスクもあり、国内市場の回復も望めない。結局は4番打者を米国に任せる状況に変わりはないからだ。
米国ではトヨタとホンダが需要好調時に立案した新工場を立ち上げる。トヨタのカナダ第2工場とホンダのインディアナ工場は今秋、トヨタのミシシッピ工場は2010年頃の操業開始を予定している。
カナダ第2の「RAV4」インディアナの「シビック」はいずれも販売好調ではある。ただ、既存工場で生産調整をしながらの立ち上げという、想定しなかった事態ではある。この局面をいかに乗り切るかが、今年度のトヨタとホンダの米国事業の注目点になる。