「地球温暖化が進んで海面が上昇する」という説が半ば「常識」となる中、著名ブログに「地球は氷河期になる」と、それとは全く逆の主張が掲載された。これにはエイプリルフール向けの「釣り」だとの見方が有力だが、かつて「氷河期到来」を描いたSF映画が制作されたこともあり、あながち荒唐無稽とも言えなさそうなのだ。
地球温暖化に警鐘を鳴らす教授が豹変!?
地球上の氷は溶けてしまうのか(写真はイメージ)
「氷河期説」を唱えているのは、アルファブロガーとして知られる経済学者の池田信夫さんのブログ。2008年4月1日に掲載された「地球は氷河期になる」という記事。同記事では、気候学者の第一人者ともいわれる米スタンフォード大学のシュナイダー教授が書いた論文を紹介。同教授は、地球温暖化に警鐘を鳴らしている「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」でも中心的な役割を果たしているが、ここで紹介されている論文では、「大気汚染で太陽光線が遮断され、地球の表面温度は今後50年間で3.5度も下がる。これが引き金となって、氷河期に入るおそれが強い」などと予測しているのだ。
ブログの記事本文では言及されていないのだが、この論文が発表されたのは1971年。かつて「氷河期説」を唱えていた学者がなかば「変節」して気温上昇を主張していることを、池田さんはこのように皮肉っている。
「昨年ノーベル賞の授賞式に出席したIPCCの指導者が、このような論文を権威ある学会誌に発表したことに、世界の気候学者は衝撃を受けている。IPCCは緊急会合を開き、大気汚染の影響を勘案した新しいモデルによってシミュレーションをやり直すことを決めた」
07年のエイプリルフールでも「釣られる」人続出
なお、J-CASTニュースでも「『従軍慰安婦記事でおわび』 著名ブロガー朝日批判の『ウソ記事』」という記事で報じたように、池田さんは07年のエイプリルフールには、従軍慰安婦についての記事を掲載。コメント欄では「釣られる」人も続出した。今回の「氷河期説」の記事についても、IPCCを批判するための「釣り記事」との見方が多い。
もっとも、「氷河期説」自体は、必ずしも「完全に荒唐無稽」という訳ではなさそうだ。例えば2004年に制作されたSF映画「デイ・アフター・トゥモロー」は、実際の史実をもとにしたものなのだ。同作品は
「地球温暖化でグリーンランドの氷が溶けたのをきっかけに海流が変化し、世界各地が異常気象に襲われ氷河期に突入する」
といったストーリーなのだが、1万2000年前に、最終氷期が終わって温暖化が始まったころのエピソードをもとにしている。このときは、温暖化で北米を覆っていた氷が溶け、大量の淡水が海に流れ込んだ結果、深層を流れる海流が停止。その結果、このあと約1000年間にわたって地球は寒冷化したとされる。
「日経エコロジー」などの環境系雑誌でも、同作品についての話題を複数回にわたって取り上げており、「氷河期説」に対する関心の高さをうかがわせると同時に、気候変動をシミュレーションすることの難しさを浮き彫りにしている。