ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)は大手企業が2004年頃に登場し、「ミクシィ」の独走状態が長く続いていた。しかし、パソコンからモバイルへ利用層が広がり、これをうまく捕まえた「グリー」が急速に会員数を伸ばしつつある。同社によると、08年2月29日に400万人を突破。300万人を超えた07年12月1日から90日という短期間で、会員数が100万人も増加した。SNSは「戦国時代」に突入したといえそうだ。
利用者の約半数が女性
グリーは急速に会員数を伸ばしている
グリー(東京都港区)の広報担当者によると、05年6月からモバイル中心のサービスにシフトし、コンテンツを拡充したことが利用者の拡大につながったという。
06年11月にはKDDIと提携を開始し、その後ソフトバンク、ドコモでも利用できるようになった。広報担当者は、「女性の多くがモバイルを使用していることに着目した。今では20代~30代を中心に利用者の約半数が女性だ。07年12月には音楽やニュースなどユーザーを広く取り込めるコンテンツも充実させ、全体的に利用者が増えた」と話した。
女性に人気の高いコンテンツでは、ペットを育成するゲームや、デコレーションメール、プロフィールの着せ替えが楽しめる「アバター」などがある。すべて無料だ。
今後については、「ゲームを集めただけのサイトと差別化し、ゲームを通してコミュニケーションができるSNS連動型コンテンツを増やしていく」とし、早期に会員数1000万人を目指す。
KDDIの担当者は、「広告収益は順調。効果があった」と満足している。「au one GREE」単体での会員数は200万人(08年1月現在)となっている。
一方、「グリー」と同時期に立ち上がったSNS「ミクシィ」の会員数は、08年1月30日現在で1331万人で、その差は大きい。
このまま「ミクシィ」の独走となるか。J-CASTニュースがITジャーナリストの井上トシユキ氏に話を聞いた。
SNSビジネスは戦国時代に突入した?
井上氏は、
「『ミクシィ』の一極集中はもう終わった」
という。
その理由として、最近「ミクシィ」では利用者にとってマイナスになる情報が多く発信されていることを指摘した。08年3月3日に発表された新規約で、日記などの情報を自由に使用・改変し、著作者人格権も行使させないと一方的に決めたほか、07年10月にはデザインをリニューアルしたが、会員から「使えなくなった」「旧バージョンに戻してほしい」などという苦情が殺到したことも記憶に新しい。
ネットサービスの特徴は「おもしろいサービスが登場した途端、会員が大移動する」傾向が挙げられることから、他のSNSサービスを展開する企業にとって今が「チャンス到来」と言えそうだ。
また井上氏は、「SNSが定着した今、単に会員数が多いというだけでは利用者にとって魅力的とは感じられない。サービス内容や、使い勝手のよさなど独自色を出していかなければ、生き残れない。SNS戦国時代だ」と現状を分析した。
今後考えられるサービスでは、富裕層や学生とターゲットを絞ったもの、動画のアップロードに注力したもの、セキュリティを重視したものなど。ネット難民向けなんていうものも、可能性があるという。次期勝ち組を目指して、各社は模索中だ。
サービスの独自性を追求する上で、ハードの進化も無視できない。井上氏は、「ノートパソコン並のCPUを搭載した携帯電話が近く発売される。また、ワンセグより高画質の外付けモニターや、音声入力方式が普及する。ハード面の充実で、より進化したサービスが登場するだろう」という。