「子供が王様」これでいいのか フィンランド式教育に学べ

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子供が大人を見下している環境が問題だ

――「答えがない」というのは新しい。日本では「正解がある」というのが当たり前になっていますよね。

フィンランドメソッドは、その一つの投げかけですね。今の教育は「子供のために」という言葉を履き違えているのではないかということです。子供にとって、親も教師も都合のいい大人を演じてしまっている。子供に皆が振り回されてしまっている。そんな気がしてなりません。

子供が大人を見下している環境ってありますよね? 教師が何かすればすぐ「教育委員会に訴えてやる」と子供が言う。そんな状態で子供が先生の指導を聞くのか、やらされていている先生を子供が信用できるか、というと難しい。

その親はどうかというと、子供の言いなりになって先生を攻撃する、社会を攻撃する。言ってみれば、子供が「王様」になってしまっている。

たとえばトイレに行きたくなった生徒が「先生、トイレ」といったりしますが、これは日本語ではないですよね。「先生、トイレに行っていいですか」というべきなのに、それで許してしまうから表現しなくなる。周りがみんな、察してくれる。そんな傾向が今の教育現場で物凄く強いのです。増えているのは「お友達先生」。生徒と同じ目線でわいわいやっているのが楽しいからいい、という人たちです。

こんな大人になりたいと思えないですよね。今の時点で対等ですから、大人から何かを学びたい、吸収したい、という姿を見出すことが難しい。当然ながら子供たちに向上心が生まれない。大人のスタンスを考え直さなくてはいけない。そういう観点からこのドリルを作ったというのはあります。

――フィンランド式の教育をもっと取り入れるべきだと思いますか。

フィンランド式は数値で評価するテストはほとんどしない。それには社会的背景があります。日本で大学受験があって、偏差値があって、テストで点を取るという文化がこれほど根付いているなかで、「テストをやめろ」という風になって、0か1の二元論になってしまうのは怖いですね。それでは日本の教育システムが崩壊するだろう、と。全部フィンランド式にすればいいとなってしまうと、日本の持っていたいいものをなくしてしまうことになるような気がします。

たとえば、日本で「フィンランド式」で解答を書くとき、算数だと、図と式だけ書けばいいというのを、言葉でしっかり説明させるということをしたんです。表現力のトレーニングなんです。理科、社会の知識科目を教えるにしても、「カルタ」を使って枝葉を広げることを宿題にする。すると、次の授業でも反応がよくなる。知識の定着も早いです。 何もかも全部フィンランドメソッドでやるというより、今のカリキュラムで取り入れるところを取り入れてもらうというのが良いのではないでしょうか。フィンランド式という名前で残るかは別にして、こういう発想が大事だよねという考え方だけでも残ってくれればいいのかな、と思っています。

【諸葛正弥(もろくず・まさや)プロフィール】
1974年生まれ。教育技術コンサルタントT's skill教育技術研究所代表。NPO法人交流分析協会会員、交流分析士。大手進学塾講師などを経て2005年度より「T's skill教師塾」を主催し、塾講師出身の教員研修講師として活動。

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