橋下徹大阪府知事が、いわゆる同和関連事業の全面的な見直しを指示していたことがわかった。ウェブサイトで公開された部長級会議の議事録から明らかになったもので、「徹底的な見直しが必要」などと述べ、府の幹部も「全庁的にゼロベースで見直す」と応じた。一方、府議会では、「同和行政を完全に終結させることが必要だ」と主張した共産党議員に対し、「差別意識はまだ残されている」と事業の継続を主張しており、知事の同和関連事業に対するスタンスに注目が集まりそうだ。
「全庁的にゼロベースで見直していくことになる」
発言は、2008年3月26日に行われた部長会議でのもの。
知事は
「私はまだ同和問題は解決していないと思う。しかし、優遇措置は、差別を助長するものであり、認められない。差別意識を一掃するためには、府民から優遇施策がなくなっていると分かるようにする必要がある」
との持論を展開。さらに、
「同和対策を一般施策(一般の事業と同等)にしたと言うが、本当にそうか。形式だけでなく、実質的に一般施策化しているか徹底的な見直しが必要だ」
と、特別措置法による同和対策事業が01年度末に終了していることを念頭に、「優遇措置」と取られかねない施策の一掃を求めた。さらに、
「部局担当には苦労をかけるが、最後は私が交渉の場に出ても構わない」
と、「抵抗勢力」との「対決宣言」とも取れる発言も飛び出した。政策企画部長も
「同和問題の解決に向けた取り組みについても、全庁的にゼロベースで見直していくことになる」
と応じ、刊行物の購入や、人権センターなどを見直し対象の例として挙げた。
これだけを読むと、橋下知事は同和行政に極めて消極的なように見えるが、議会でのやり取りをみると、そうも言い切れないようだ。08年3月7日の府議会代表質問で、共産党の議員が
「同和行政を継続することは、かえって『逆差別意識』を生じさせるなど、問題解決にとって有害。同和行政を完全に終結することが必要なのでは」
と主張。
「優遇措置」に見える例が「人権センター」?
それに対して、橋下知事は
「同和問題は解決されていないと認識しており、一般施策でその解決に取り組んでいる。解決されていないというのは私の実体験。いわゆる同和地区というところで育ったが、現在、同和問題は全く解決されていない」
と、同和問題への対策の必要性を訴えた上で、
「差別意識があるからと言って、特別な優遇措置を与えてはいいのか、というのは全く別問題。全て一から総点検していく」
と、部長会議同様の主張を展開した。
このやり取りの背景を、大阪府人権室では、このように解説する。
「02年から、制度設計上は『優遇措置』は存在しません。これは知事も認識を共有しているはずです。仮に府民の視線から『優遇措置』に見えるような施策があるとすれば、見直しを行いますし、実際に見直しを行っているところです」
この「優遇措置」に見える例の一つとして「人権センター」の名前があがった模様で、それ以外にも見直しを進めていきたい考えだ。
もっとも、人権室では「知事発言にある『ゼロベースで見直す』というのは府政全般に対するキャッチフレーズのようなもの」と話し、同和関連事業だけが「標的」になっているのではないとの見方だ。