トヨタ自動車の13代目「クラウン」に新設定されたハイブリッド車の販売で、全国のトヨタ店(東京地区は東京トヨタと東京トヨペット)は不安を抱えている。発売開始は2008年5月6日だが、人気は高水準で推移し、すでに納車が7月以降の状況にある。好調注文が増えれば納期はさらに伸びる。今後、殺到するとみられる注文をどうするのか、お客は待ってくれるのか。販売店は早くも悩んでいる。
開業医や弁護士など個人事業主が予想以上に関心示す
「クラウン」ハイブリッドモデルへの予約が殺到している
08年2月18日に発表・発売された13代目クラウンの発表後1ヶ月間の累計受注台数は約2万4000台。2003年12月に発表・発売された12代目クラウンの発表後1ヶ月累計受注台数約2万2千台を上回った。12代目の月販計画台数は5000台、13代目は5500台で、累計受注実績はともに月販計画の4倍超を果たした。
13代目の発表時にマスコミに公表した発売後1ヶ月間の累計受注目標は月販計画の2倍となる1万1000台。だがトヨタは販売店に対し、月販計画の2倍ではなく4倍の受注台数の確保を最低限達成するように指示していた。3月中旬までは、この高い目標に対して到達が困難との見方もあったが、なんとか超えることができたわけだ。
販売店が4倍の目標達成に苦戦したのは、東京などにおける個人事業主の新車代替獲得が難航したためだ。この結果、累計受注台数のうちの法人契約者の比率は12代目の30%に対して13代目は35%となり、法人ユーザーの比率が増えた。
燃料価格の高騰やCO2排出量削減に対する取り組みなどにより、企業のハイブリッド車に対する関心は高まるばかりの状況にある。クラウンの購入層は企業や官公庁、団体、個人事業主、個人など幅広い。とくに開業医や弁護士、個人タクシーなどの個人事業主が予想以上にハイブリッドに関心を示したという。
1ヶ月間の累計受注台数の構成比は、12代目のロイヤル70%、アスリート30%に対し、13代目はロイヤル50%、アスリート40%、ハイブリッド10%となり、13代目は12代目よりもアスリートの比率が上昇した。それでも、ユーザー層の若返りがそれほど進んでいないのでは、という心配がある。
ユーザーは納期まで待ってくれるのか
発売後1ヶ月の間に旧型以前のクラウンから新型クラウンに代替するユーザーの比率が、12代目では65%だったのに対し、13代目では70%に増えたことも要因だ。販売店は、本来、レクサスの「GS」「IS」に移行するはずだったユーザー層が、クラウンに居残っているだけではないかと推測する。レクサス「LS」は、トヨタ「クラウンマジェスタ」「セルシオ」のユーザーが移行することで販売好調となった。13代目クラウンの受注好調は良いが、トヨタ店が保有するユーザーをトヨタ、レクサスの両ブランドで食い合うのでは、両ブランドの店舗を持つトヨタ店は経営が成り立たなくなるわけだ。
5月に発売されるハイブリッドは、法人や官公庁の購入が中心になり、13代目のなかでハイブリッドの比率は15%程度になるとトヨタは予測。東京などの大都市圏の販売店は、代替に踏み切らない個人事業主が多いこともあり、一時的に13代目の受注の30%をハイブリッドが占めるとみる。
13代目の月販計画5500台のうち、ハイブリッドの販売計画は800台。発表後1ヶ月の累計予約受注は2400台に達し、5月の発売後の納車は2ヶ月待ちの7月となった。トヨタはハイブリッド車の生産能力の増強を順次行っているが、ハイブリッドユニットの増産でトヨタ自動車九州や部品メーカーなどの足並みが揃うのは2009年となる。
ただ、2009年以降、トヨタにはリチウムイオン電池を搭載した新たなハイブリッド専用車やプラグインハイブリッド車の投入計画もあり、他社も含め新たな魅力のある車は次々と登場する。クラウンハイブリッドの納期があまり長くなった場合、新技術を求める個人ユーザーがどれだけ納期を待てるのかにトヨタの販売店は疑問を持つ。
LSのハイブリッドの販売では納期を待つユーザーがしっかりと存在した。はたしてクラウンハイブリッドはどうなるのかが見えない状況にある。クラウンハイブリッドを試乗してから購入車種を決めるという個人事業主や個人ユーザーも多く、評価が下されるのは、まだ先のようだ。