「新銀行東京」3年間金融検査なし 動かぬ金融庁に「不可解」の声

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   税金でまた銀行が救済される。経営不振に陥っている新銀行東京への追加出資の問題は、2008年3月26日に開かれた東京都議会予算委員会で400億円の追加出資案が可決され、9月にも実現する見通しとなった。これによって新銀行東京は当面存続するが、銀行関係者のあいだから、ここまで経営悪化しているのにもかかわらず検査に入らない金融庁をいぶかる声が漏れている。

経営が不安視されていた金融機関には、1年に1度は検査が入る

金融庁は3年間、「新銀行東京」を野放しにしていた?
金融庁は3年間、「新銀行東京」を野放しにしていた?

   石原慎太郎都知事の肝煎りで設立された「政治銘柄」であることには違いないが、「あれが民間の銀行であれば、もっと前に検査が行われ、早期是正措置が発動されていてもおかしくない」(銀行関係者)という。金融庁の不可解な動きに、「都内金融機関再編の青写真があるのではないか」との憶測も流れている。

   新銀行東京への追加出資をめぐっては、出資に反対していた都議会民主党が金融庁を訪ねている。監督官庁である金融庁に、「なぜ、立ち入り検査に入らなかったのか」と行政上の責任を指摘する声があったからだ。

   これに対して金融庁の佐藤隆文長官は3月24日の記者会見で、金融検査の実施について、一般論と断わったうえでこう答えている。「当局の組織・人員に制約があるなかで、検査業務全体を効率的、効果的に行う観点から、各金融機関の経営状況や自主的に取り組んでいる業務改善の実施状況などの、さまざまな要因を総合的に勘案したうえで実施時期を決定している」

   J-CASTニュースの取材にも金融庁は「何年に1度入らなければならないなどのルールはない」と話した。

   金融庁で新銀行東京を担当するのは「銀行1課」だ。銀行1課はメガバンクやインターネット専業銀行などの新規参入銀行を監督する部署。じつは、「新銀行」には「創業3年目の黒字化」というハードルが課せられている。イーバンク銀行やソニー銀行、セブン銀行といった新しい銀行は、このハードルをクリアするのにとても苦労した。ところが金融庁は、新銀行東京はBNPパリバ信託銀行の事業を継承して発足したので「新銀行」ではない、と判断しているとされる。

   銀行関係者が首を傾げるのはここだ。「既存の銀行と同じように扱うのであれば、3年間も検査に入らないなんてことはない。石原知事の肝煎りということで、そもそも潰れないし、金融庁も潰すつもりがないのではないか」(地銀幹部)と見る。背景には設立当初から政治的な判断があったというのだ。

   実際に、この3年間で金融検査を受けていない銀行はない。前回の検査から間隔があいている銀行で、静岡銀行や青森銀行、大光銀行、静岡中央銀行、沖縄海邦銀行の2年半が最長だ。過去に経営が不安視されていた金融機関には、1年に1度は検査が入っていて、まして公的資金が入っている銀行などは「毎月の報告もあって、1年中検査されていたようだった」(地銀関係者)と話す。「ペイオフが解禁されているのだから、預金者保護を考えれば、なおさら早く検査する必要があった」ともいう。

都内金融機関の再編、「青写真ある」

   ちなみに、金融検査は08年1月から評定制度が導入されていて、A評価だと金融検査に入る間隔がおおむね3年以上、Bだと2~3年、Cは2年以内、Dだと1年以内と、金融機関は推測している。

   とはいえ、新銀行東京は400億円の追加増資によって「延命」する。ただ、各マスコミが報じているように再建計画の達成はむずかしそうで、その前途は多難。「400億円がなくならないうちに、身売り先をさがすことになる」(大手銀行の関係者)との見方が大勢だ。

   東京都内に本店を構える銀行の関係者は、「新銀行が不良債権処理にケリをつけたら、みずほが引き受ける」とし、また別の銀行関係者は「これから都内の信用金庫を含めた再編が本格化する。取引先のことを考えると、信金クラスに引き受けてもらうのが現実的」とみている。

   これには都内の大手信金の幹部も、「以前から金融庁には都内の信金を4つにする案をもっている。今後、銀行への転換も出てくるだろうから、大手信金が受け皿になる可能性はあるし、当局がそんな青写真をもっていても不思議はない」と推測する。

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