京都議定書の第1約束期間(2008~12年)がはじまるが、二酸化炭素(CO2)削減の柱として政府は、民生部門(家庭や業務部門)の対策を強化する方針だ。国民が一丸となってCO2の削減に協力し、「地球温暖化を防ごう」というのだ。エアコンの設定温度を1度下げる、水を流しっぱなしにしない、電気をこまめに消す・・・。家庭でできるCO2の削減の具体策として、東京電力をはじめ全国の電力会社はホームページに「環境家計簿」を掲載して、採用を勧めている。1か月にどのくらいのCO2を削減できたか、明細書にある電力使用量を入力するとわかる仕組みだ。
「環境家計簿」をつける
CO2削減の「柱」として政府は家庭での対策を強化する考えだ(写真はイメージ)。
京都議定書の「お膝元」である京都府は、温室効果ガス削減の10%削減をめざしている。旗振り役の京都府地球温暖化対策プロジェクトは、「省エネでCO2が削減できると訴えても、実際になにをどうすればよいのか、わからないという声は多い」という。それもあって、ホームページや省エネ相談会を設けて、具体的な対策方法を示し、行動に移してもらおうとしている。
たとえば、こんなCO2削減メニューが示されている。
(1)電源スイッチをオフにして、コンセントからプラグを抜くと、年間167KWhの節減、3674円の節約になる。CO2で、56.78kgの削減になる。
(2)家庭用蛍光灯(6~8畳)を省エネタイプに買い換えと年間8Whの電気を節減。176円の節約。CO2で、2.72kg削減できる。
(3)マイカーの利用を控えて、自転車や公共交通機関を利用すると、年間72.5キログラムのCO2削減、年間3594円の節約になる。
さらに、削減できた人が、削減できなかった人にCO2を売るというかたちで「相殺」する、「カーボンオフセット」という仕組みによって、家庭のCO2削減分を京都府内の企業が買い取る「CO2バンク」(仮称)を08年度から導入する。CO2の削減活動もいよいよ「家庭」に入り込んできたというわけだ。
最新技術でCO2を削減
こうした省エネに加え、最新技術の導入できるCO2削減がある。エアコンと同じヒートポンプシステムの原理を使った電機給湯器である「エコキュート」は、従来の燃焼式給湯器に比べて約30%の省エネ効果で、CO2排出量は約50%削減できるという。
ヒートポンプとは、空気中の熱を熱交換器で冷媒に集め、その冷媒を圧縮して高温にして、熱をもった冷媒の熱を水に伝えてキッチンや洗面所、バスルームのお湯に変える仕組み。日本冷凍空調工業会の調べによると、エコキュートの国内出荷台数は07年9月末で100万台を超えた。電気事業連合会の試算では、100万台の普及により、年簡約60万トンのCO2を削減でき、これは東京23区の面積の約3倍相当の森林を保全するのと同じ効果があるとしている。また、国としてもCO2削減の切り札として、2010年までに累計520万台を目標に普及に取り組んでいる。
ちなみに京都府によると、標準的な家庭にエコキュートを設置すると、年間1550.65KWhの電気を削減でき、3万4114円の節約。CO2を527.2kg削減できるという。
エコキュートは、導入するだけで何か特別な省エネをするわけではなく、CO2を削減できるのがミソだ。こうした新たな技術の導入によるCO2削減も家庭でできる環境対策のひとつとして注目されている。
クリーンな電力とは
CO2排出の少ないエコキュートも電気は消費するが、発電時にCO2を排出しないクリーンな電力として思い浮かぶのが風力や太陽光といった新エネルギーだ。新エネルギーは国内でも普及が進む一方で、発電効率や経済性などで課題が指摘されている。
こうした中で、CO2を効果的に削減できる手段として原子力発電に再び世界の関心が高まっている。原子力発電には「CO2を排出しない」という強みがあるためだが、原油などの燃料高とも相まって新設に向けた動きが活発化している。日本では現在55基の原子炉が稼働しているが、仮に過去最高の実績値である84.2%の利用率で運転していれば、2006年度(実績は69.9%稼働)では約3900万トンものCO2を抑制できたとの試算もあり、「クリーン電力」の視点からも欠かせない手段だ。