金融庁や日銀から「訴訟に打って出るべきだ」との声
関係筋によると、武富士のケースでは、メリルが組成した仕組み債はもともとスキームが複雑だったのに加え、高いレバレッジを利かした価格変動リスクが高い性質を持っていた。この種の取引では「取りまとめ役は仕組み債の時価評価額を定期的に投資家に報告するのが常識」(大手証券幹部)というが、メリルはサブプライム問題が深刻化し、証券化市場が機能麻痺に陥った07年末の時点でも、仕組み債の格付けが最上位の「トリプルA」だったことなどを根拠に、武富士側に「評価損は限定的」との報告をしていたようだ。
ただ、今回のサブプライム問題の混乱が世界的に広がったのは、商品のリスクを精査しない甘い格付けが大きな要因。武富士のケースはまさにこれに当たり、2月下旬には、メリルから同仕組み債の市場価値が「元本の10%以下」まで下がり、財務制限条項に抵触し、取引そのものの解消が通告されたようだ。
武富士側からすれば「騙された」との思いを強くするのは当然。また、米国での投資銀行や大手金融機関に対するサブプライム訴訟の基準(売った証券化商品の時価評価をタイムリーにきちんと投資家側に伝えていなかった)からすれば、武富士には当然、メリルに対して損害賠償訴訟を起こす正当性があることになる。
日本の金融市場での外資の狡猾ぶりを日ごろから快く思っていない金融庁や日銀幹部の間からは「武富士は訴訟に打って出るべきだ」と「応援コール」も起きており、金融界では武富士の動向に注目が集まっている。